・・・のアメリカでも、たまには相当な大地震があり、大山火事があるし、時にまた日本にはあまり無い「熱波」「寒波」の襲来を受けるほかに、かなりしばしば猛烈な大旋風トルナドーに引っかき回される。たとえば一九三四年の統計によると総計百十四回のトルナドーに・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・陸海軍当局者が仮想敵国の襲来を予想して憂慮するのももっともな事である。これと同じように平生地震というものの災害を調べているものの目から見ると、この恐るべき強敵に対する国防のあまりに手薄すぎるのが心配にならないわけには行かない。戦争のほうは会・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・ 弘安四年に日本に襲来した蒙古の軍船が折からの颱風のために覆没してそのために国難を免れたのはあまりに有名な話である。日本武尊東征の途中の遭難とか、義経の大物浦の物語とかは果して颱風であったかどうか分らないから別として、日本書紀時代におけ・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
昭和八年三月三日の早朝に、東北日本の太平洋岸に津浪が襲来して、沿岸の小都市村落を片端から薙ぎ倒し洗い流し、そうして多数の人命と多額の財物を奪い去った。明治二十九年六月十五日の同地方に起ったいわゆる「三陸大津浪」とほぼ同様な・・・ 寺田寅彦 「津浪と人間」
・・・ 先住アイヌが日本の大部に住んでいたころにたとえば大正十二年の関東大震か、今度の九月二十一日のような台風が襲来したと想像してみる。彼らの宗教的畏怖の念はわれわれの想像以上に強烈であったであろうが、彼らの受けた物質的損害は些細なものであっ・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・あの日も、午前に狂雨が襲来して、それが晴れ上がってからあの大地震が来た。今日の天候によく似ている。しかし昨朝八丈島沖に相当な深層地震があったのでそれで帳消しになったのかもしれない。あの日は津田君の「出雲崎の女」が問題になっていて、喫茶室で同・・・ 寺田寅彦 「二科展院展急行瞥見記」
・・・ 日本の家屋が木造を主として発達した第一の理由はもちろん至るところに繁茂した良材の得やすいためであろう、そうして頻繁な地震や台風の襲来に耐えるために平家造りか、せいぜい二階建てが限度となったものであろう。五重の塔のごときは特例であるが、・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・これが実現した暁には北西の空からあらゆる波長の電磁波の怒濤が澎湃としてわが国土に襲来するであろう。 思想などというものは物質的には夢のようなものである。半世紀たたないうちに消えてしまわなければ変化してしまう。日本には昔からずいぶんいろい・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・ かかる少年時代の感化によって、自分は一生涯たとえ如何なる激しい新思想の襲来を受けても、恐らく江戸文学を離れて隅田川なる自然の風景に対する事は出来ないであろう。 鐘ヶ淵の紡績会社や帝国大学の艇庫は自分がまだ隅田川を知らない以前から出・・・ 永井荷風 「夏の町」
・・・ 千数百年以前にわが国へ襲来した仏教の文化はまさにかくのごときものであった。それはただ一つの新しい宗教であるというだけではなく、我々の祖先のあらゆる心を動かし得る多方面な、内容の豊かな大きい力であった。もしそれが、ローマを襲ったキリスト・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
出典:青空文庫