要件 四月二十六日一、出版プランについて党でとり上げるにしろ、イニシアは加藤が自分でとったものと感じていることを十分念頭におく必要があるでしょう。 きのうも「共産党の婦人部がどう思ったってかまわな・・・ 宮本百合子 「往復帖」
・・・と、非常に語尾の強い、ややぼきぼきした言葉で、注文の要件を提出した。 私共に応待した卓子の前にいた男は、立って行って、盲唖学校の近所にあるという一軒の家をサジェストした。「場所は分りますか? 電車分りますか?」「分ります。私行っ・・・ 宮本百合子 「思い出すこと」
・・・結婚の話が要件で、あちらで知った日本の娘さんで声楽を勉強している人、カネボウの重役とかの娘で、小さい写真が入っていますが、ちっ共悪くパッとしたとこのない、やっぱりどてらの苦労もしそうな人で、皆いい点をつけました。娘さんの方では、何かの便利で・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・の婦人雑誌に彼が最近かいたものの中で、文学を日夜想念する作家として誰彼のことを云っていたが、文学の想念ということは、窮局には、たゆまず自分を破いて行こうとする情熱、それを表現し文学化してゆく文学上の諸要件での一致点の発見のことではないだろう・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・読書を愛するとか、思索を好むとか、感受性の鋭いとか云うのは皆準備的要件で、重大なのは、どこまでそれ等のおもりに依って自己に沈潜し得るかということです。外界の刺戟によって発動した自己の感激、意望というものを、一先ず、能う限り公正な謙虚な省察の・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・朝起は勤勉の第一要件である。お爺いさんのする事は至って殊勝なようであるが、女中達は一向敬服していなかった。そればかりではない。女中達はお爺いさんを、蔭で助兵衛爺さんと呼んでいた。これはお爺いさんが為めにする所あって布団をまくるのだと思って附・・・ 森鴎外 「心中」
・・・たるべき最大要件である。この自覚に立ってすべての人が奮闘したならば人生は理想化せられ人類は向上す。獣性と虚栄と悪習慣とを超越して「全き人格」に憧るる時はクリアハートとクリンヘッドとをもって「人格」を形づくる刹那である。吾人が真正の社会主義の・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫