・・・右両翼への偏向を生む社会的要因である場合、われわれの警戒と努力とは、相互的な関係において常に結ばれている。 顕著な右翼的偏向への危険が目前および自分の作品中にあるとき、それの克服のために努力せず、たまたまそれとの闘いを取り上げた論文が、・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ 昨年ごろからヒューマニズムの声があり、遅々として発展の困難を示しているが、日本におけるこのヒューマニズムの理解、把握の内部には、さきに述べたような要因と並んで封建時代の文学を支配していた人情、自己放棄の陶酔感などの尾が脈々と絡みついて・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・ プロレタリア文学運動時代からの発展として、文学運動全体としての性格とその中の主導的要因としての労働者階級の文学が、はっきりさせられる時が来ている。 こう考えて来ると、もういつの間にかこれまでの形での「勤労者文学」の柵はふみこえられ・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・ その間接の原因となるものは、一昨年の末から去年にかけてプロレタリア作家の間を荒した批評嫌悪症のさまざまの要因が、今はプロレタリア文学運動の歴史の鏡に照らされて相当はっきり私にも見えて来たことと、そこから汲みとったいろいろの教訓をもって・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・は大ざっぱにしか理解されなかった一般人間性から、人間の階級性を描き出すことを可能にしたし、更にはかなく弱く権力に踏みにじられる存在でしかあり得なかった個性と、個々の自我とを、複雑多様な階級の性格をなす要因、階級的な自主性・独自性としての自我・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ 私たちの足跡は、ほかならぬ私たちの足の下からしか現れないという意味で、一人一人の作家の必然の道がよきにつけあしきにつけ、その作家の文学の現実を決定してゆくし、日本の今日の文学の性格の一要因としてかかわりあってゆくわけである。 一人・・・ 宮本百合子 「日本の河童」
・・・ しかし、昨今作家及び文学愛好者の間に生じたバルザック熱ともいうべきものを、その社会的要因にまでふれて観察した場合、はたして、それが文学の正常な発展のために積極的な意味だけをもつものであると言い切れるであろうか? 答えは、おのずから複雑・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・を縦に切った一つの世紀の中でも、地球を横にまわって見て現れる各国の風俗というものは、決して一様ではなく、いつも必ずその世紀の本質とかかわり合いながら、その国独自なものとして現われている過去と未来への諸要因を示しているものだと思う。風俗という・・・ 宮本百合子 「風俗の感受性」
・・・そして、失敗の原因がこの作品においては、主題と手法との間にある矛盾であると考える時、その問題を、作者の人間的な要素としての階級要因において分析しようとする欲望を感じるのである。「風雲」において、作者は竹造の過去の身の上に具体的にはふれて・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・科学現象は純客観的なものであるにしろ、その純客観的な科学の現象にかかわってゆく際の人間的要因というものこそ、科学が人間の生活圏の中に存在するモメントをなしている筈だ。どうして、そういうモメントにおいて、科学と文学とが渾然とした統一におかれた・・・ 宮本百合子 「文学のひろがり」
出典:青空文庫