・・・活の間に懸隔をもたらさないと同時に、男であり、女であるという偶然なことで、受け入れる文化のよろこびの範囲が大変掣肘されたり、又は文化の創造力への関心の度がちがったりしないようになることも、一つの切実な要望であろう。 日本の文化の国民的な・・・ 宮本百合子 「実際に役立つ国民の書棚として図書館の改良」
・・・農村を題材として和田、伊藤の作家が活動し始めたには、前年からの社会的題材への要望、作品の世界の多様化の欲求が一つの動機をなしていたのであろうが、それらの作品が好評を博したことは、当時の官民協力の気風と結びつき銃後の農村の重要性を文学も反映さ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・『文学界』のロマンティストたちは、自分たちの人間的存在への主張と一つものとして、女の成長を要望していた。若々しいその情熱は、習俗とのぶつかりで深く傷き、透谷のような人をも出した。 ロマンティストたちの破れた夢のみなもとまで探り入って・・・ 宮本百合子 「職業のふしぎ」
・・・市川房枝、金子しげりなどの婦人参政権獲得期成同盟会が成立したのは翌十三年のおしつまった十二月のことであり、いよいよ十四年普選案が両院を通過したと同時に、婦選の要望もきわめて一般的なひろがりをもちはじめた。 大正十五年二月には婦人参政建議・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ 新しい日本の生活というものは、希望とか要望とかいう生やさしいものではなくて、この刻々のうちに木炭切符のなかから砂糖切符のなかから湧き出して来ている現実である。青年の成長力にとって、下宿の食物は益々空腹を充すに足りないものとなりつつある・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・プに立つ日本の紡績界の半封建のままの少女労働の搾取に対して、厚生省が、一、女工寄宿舎制度の撤廃、二、遠隔地からの女工員募集禁止、三、女子の就業率引下げと男子労務の増強、四、通勤による工員の確保、などを要望すると語られている。現在十五歳から二・・・ 宮本百合子 「その檻をひらけ」
・・・として、はげしく検事の取調べの不当を非難した第一日の公判廷で、竹内被告の弁護人鍛冶だけが「個々の被告の人権を尊重し、被告個人の特殊性を無視して一色に塗りつぶしてはならぬ」と要望したには、以上のいきさつがあった。学生服や開襟シャツに重ねた仕事・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・┐ 辰野隆 ├ 福田恒存 ┘福田恒存 諷刺、喜劇はジャーナリズムでも要求されているし 読者の要望もある。江戸時代の諷刺、喜劇はアブソリューティズムがあって、それに対する・・・ 宮本百合子 「東大での話の原稿」
・・・戦争を嫌悪する心、平和な状態で平和な人民生活を安定させたいという願いは、第二次大戦でどっさりの血を流した世界にあまねく感じられている現在の要望です。 第二次大戦が殆ど地球全面を破滅におとし入れたという事実は、ヨーロッパにおいていわゆる戦・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ 文学というものの興味つきない胎内では、民族がある時期に遭遇している特殊な歴史の相貌や要望やらというものを、それなりで結論とはしていない。「イリヤード」や「オデッセイ」にしろ、経験された事象が、その経験された時間と空間との中から、もっと・・・ 宮本百合子 「文学は常に具体的」
出典:青空文庫