・・・両手を組合したり、要点を強めるために片腕をつき出したり、また指の端を唇に触れたりする。しかし身体は決して動かさない。折々彼の眼が妙な表情をして瞬く事がある。するとドイツ語の分らない人でも皆釣り込まれて笑い出す。」「不思議な、人を牽き付け・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・これは多くの人に色々な意味で色々な向きの興味があると思われるから、その中から若干の要点だけをここに紹介したいと思う。アインシュタイン自身の言葉として出ている部分はなるべく忠実に訳するつもりである。これに対する著者の論議はわざと大部分を省略す・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ これだけのわずかな要点を抽出して考えても歌麿以前と以後の浮世絵人物画の区別はずいぶん顕著なものである。 たとえば豊国などでも、もう線の節奏が乱れ不必要な複雑さがさらにそれを破壊している。試みに豊国の酒樽を踏み台にして桜の枝につ・・・ 寺田寅彦 「浮世絵の曲線」
・・・各方面を引っくるめた全体の上から見ると実に些末な価値しかないものと他の多くの人からは思われるものであっても、それが丁度、当該審査委員の正に求めている壷にはまり、その委員の刻下の疑団を氷解せしめるような要点に触れている場合には、その審査委員の・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・ ある製造工場を見学するにしても、実際の場合は一見雑然とした機械の嵐のように運転する中を案内されて説明を聞いても眼が戸まどいをして視るべき要点を掴まえることが困難であるが、適当に編輯された映画で見れば、例えば飛行機なら飛行機の製造される・・・ 寺田寅彦 「教育映画について」
・・・ともかくもその論文の要点はそんなにひどく歪曲されずに書いてある。それなのに、活字の大小の使い分けや、文章の巧妙なる陰影の魔力によって読者読後の感じは、どうにも、書いてある事実とはちがったものになるのである。実に驚くべき芸術である。こういうの・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・私はなるべく簡単に自分の知ってる要点だけを話して電話を切った。そしてやりかけた仕事にとりかかるとまた電話がかかった。今度は別の新聞社から同じ事の問合わせであった。ボーアをまちがえてポーア/\と云っているのが気になるので、それだけは訂正してお・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・この原理の発展以来「時」の観念はよほど進化して来たが、それはやはり幾何学の「時」の範囲内での進歩である。 吾人の直感する「時」の観念に随伴して来る重大な要素は「不可逆」ということである。この要点は時を空間化するために往々閑却されるもので・・・ 寺田寅彦 「時の観念とエントロピーならびにプロバビリティ」
・・・ 日本人の対自然観が外国人なかんずく西洋人などのそれと比較していかなる特徴をもっているかということについては最近に他の場所でやや詳しく述べたからここでは詳細の解説は省略するが、その要点をかいつまんで言ってみると次のようなものである。・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・ 自分にわかっただけの要点はおおよそ次のようなものであったと思う。しかし、聞き違え、覚え違いがどれだけあるか、今となってはもうそれを確かめる道はなくなってしまったわけである。 B教授は欧州大戦の刺激から得たヒントによってある軍事上に・・・ 寺田寅彦 「B教授の死」
出典:青空文庫