・・・日蓮はここにおいて決するところあり、自ら進んで、積極的に十一通の檄文を書いて、幕府の要路及び代表的宗教家に送って、正々堂々と、公庁が対決的討論をなさんことを申しいどんだ。 これは憂国の至情黙視しておられなかったのであるが、また彼の性格の・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・それにかかわらずそういう計画をたてるというのは現代の為政の要路にある人達が地を相することを完全に忘れている証拠である。 地を相するというのは畢竟自然の威力を畏れ、その命令に逆らわないようにするための用意である。安倍能成君が西洋人と日本人・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・ これほどの損害であるのに一般世間はもちろんのこと、為政の要路に当たる人々の大多数もこれについてほとんど全く無感覚であるかのように見えるのはいったいどういうわけであるか、実に不思議なようにも思われるのである。議会などでわずかばかりの予算・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・ こんな事になるのも、国政の要路に当る者に博大なる理想もなく、信念もなく人情に立つことを知らず、人格を敬することを知らず、謙虚忠言を聞く度量もなく、月日とともに進む向上の心もなく、傲慢にしてはなはだしく時勢に後れたるの致すところである。・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・この門番は旧来足軽の職分たりしを、要路の者の考に、足軽は煩務にして徒士は無事なるゆえ、これを代用すべしといい、この考と、また一方には上士と下士との分界をなお明にして下士の首を押えんとの考を交え、その実はこれがため費用を省くにもあらず、武備を・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・ やはり、オリンピックに関してであるが、女学生のサインを求める傾向について、要路お歴々の座談記事がのったことがあった。オリンピックで東京へ来た各国選手にのぼせて、サインを強要したり、恋愛事件をおこしたりしては国の恥であるから、そうい・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・所謂要路の大官の開化思想の方向とその実行の内容を暗示し、指導し得る立場にあった。これ等の人々は、若いブルジョア日本の建設期に、文化的な活動と文学活動との分化を未だ認識せず、商売をはじめた政治家とひとし並或は一頭角をぬいた経世家として、自身を・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・ いざモラトリアムが公布されるという前日、殆どすべての銀行で、政府要路の人物、財閥たちは、手持ちの厖大な金額を、封鎖洩れとされていた五円紙幣に代えた。モラトリアムが公布されたとき一般の市民は忽ち小額紙幣饑饉で大困難をした。モラトリアム第・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・そして、要路の指導者たちはそれに対してどんな方策を考慮していられるのだろうか。 世間の人気の動きというものこそ時代の甘くて辛い裏表を瞬間のうちに表現するのだから、女を人前でいためつけるという一つのあらわれも、決してかるがるしく見すごさせ・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫