・・・れが行為決定の際の倫理的懐疑――それは頭のしんの割れるような、そのためにクロポトキンの兄が自殺したほどの名状すべからざる苦悩であるが――から倫理学によって救済されんことを求めるからであって、そのほかの観点からすれば、形式主義の倫理学は生の現・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・ これとはまた全く別の事であるが、われわれが科学の研究に従事している際にある一つの現象と他の一つの現象との間に著しい形式的ないし本質的類似があると感じ、そうしてその類似を解説し、主張してみても、他の観点に立っている学者から見ると、一向にそ・・・ 寺田寅彦 「観点と距離」
・・・愛したわが日本の国土とを結びつけた不可思議な連鎖のうちには、おそらくわれわれ日本人には容易に理解しにくいような、あるいは到底思いもつかないような、しかしこの人にとってはきわめて必然であったような特殊な観点から来る深い認識があったのではないか・・・ 寺田寅彦 「小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」」
・・・一九二八年の春の終りに書いたモスクワ印象記では、まだ階級としてのプロレタリアートの勝利の意味を把握していなかったわたしが三〇年には、明瞭にその観点に立って書いていることも、二篇を対比してみて、興味がある。「ロンドン一九二九年」も一九二九・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・この場合、国際的なプロレタリア文学運動が、二十世紀の世界文学の一発展としてもたらした文学の社会性、階級性についての諸観点、および作品の芸術的実感と歴史に対する客観的認識力との微妙な生きた関係の探求などは、民主的な文学の精髄をなす。なぜなら民・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・は傑作だが、プロレタリア的観点から農民はああ見られただけではすまない。それを書けば、諷刺より極めて弁証法的に扱われたリアリズムの小説になってしまう。 諷刺文学はいわばプロレタリア文学の行動隊である。 形は小さいが、活々したモーメント・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・とはこの観点からわれわれに何を教えるであろうか。「幼き合唱」において作者は漁師の息子である小学校教師佐田のブルジョア教育に対する反抗を書いている。貧乏なばかりに師範の五年間を屈辱の中に過し、それをやっと「向学心」と「学問の光明」のために忍従・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・新しいひろい社会性の上に立ち、集団生活の中で大きくなって来ている彼等は、或る時、作者よりはズッと正確な革命的・階級的観点で、当時の民衆の歴史的役割を観る力をもちはじめている。 グラトコフのロマンチシズム、ピリニャークの傍観的な態度、それ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・歴史小説に於てより高い観点が要求されるとき制約のなかで最も留意すべきものはこの時間的及び空間的なものではあるまいか」と云われているのである。 同氏の「南海譚」を、作者のそのような歴史小説への意図をふくんで読み、三百年の昔朱印船にのって安・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・世界的諸関係の中に日本をおき、公の観点から洞察し、心から祖国を愛する者ならば、日本の民主化が如何に重大であるか、千万の言葉にまさる重さを理解しなければならない。 政党が、公のものであるならば、自党の得票という私的目的のために、日本人民の・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
出典:青空文庫