・・・天下の政治経済の事などは日本の婦人に語りて解する者少なし。此一面より見れば愚なるが如くなれども、方向を転じて日常居家の区域に入り、婦人の専ら任ずる所に就て濃に之を視察すれば、衣服飲食の事を始めとして、婢僕の取扱い、音信贈答の注意、来客の接待・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・文法を知らざれば、書を読みて、その義理を解する事、能わず。我が言葉をもって我が意を達するに足らず。言葉、意を達するに足らざるものは、唖子に異ならず。第三、地理書 地球の運転、山野河海の区別、世界万国の地名、風俗・人情の異同を・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・西行のごときは幾多の新材料を容れたるところあるいはこの意義を解する者に似たれど、実際その歌を見ば百中の九十九は皆いつわりのたくみなるを知らん。趣味を自然に求め、手段を写実に取りし歌、前に『万葉』あり、後に曙覧あるのみ。 されば曙覧が歌の・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・くの人は蕪村が漢語を用うるをもってその唯一の特色となし、しかもその唯一の特色が何故に尊ぶべきかを知らず、いわんや漢語以外に幾多の特色あることを知る者ほとんどこれなきに至りては、彼らが蕪村を尊ぶゆえんを解するに苦しむなり。余はここにおいて卑見・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・ 何と解するかの問題 同じ「文芸批評の行方」という『中央公論』の論文の中で小林秀雄氏は、この半歳以来世間が「文学界」的空気と目して来ている一種の政論的傾向に対する弁解として「文学的思想が、種々な条件からどんなに・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・唯識を自在に講釈するだけの力のある安国寺さんだから、それを丁度尋常の人が Fibel や読本を解するように解した。F君はこの流義を踏襲することを肯ぜずに、安国寺さんに語格から教え込もうとした。安国寺さんは全く違った方面の労力をしなくてはなら・・・ 森鴎外 「二人の友」
・・・本国ドイツでファウストを興行したって、見物が皆ファウストを解する人から成り立ってはいない。分からず屋はいつも多数に相違無い。それが日本で興行せられるからは、分からず屋の数が一層大きいかも知れない。先頃日本に来られたオイゲン・キュウネマンさん・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
・・・ 事によったらこの壁に沿うている腰懸の上の大勢の旅人のうちで、誰かがあの女の詞の意味を解するかも知れぬ。兎に角自分には分からない。そしてその分からない物語をする女がこわくなるのである。 フィンクはそっと立ち上がった。長椅子に音をさせ・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
・・・の意に解するならば、人間は総じて何ほどかずつは享楽人である。が、特に一つの類型として認められる享楽人は、一定の特性を持ったものでなくてはならない。その特性は、第一に「享楽」すなわち「味わうこと」を他の何ものよりも重んじ、それによって彼の生活・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・彼らにとって有害なるものも、その真の効用を解する他のものにとっては有益で有り得る。偶像再興が生活にとって意義あるはそのためである。二 文字通りの「偶像」について考えてみる。 使徒パウロは偶像を排するに火のごとき熱心をもっ・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
出典:青空文庫