・・・ 況んや、今日の生活は、目的への手段でもなければ、未来への段階と解すべき筈のものでもない。それ自から、全的の価値を有するものだ、たゞ、我等に、犠牲的精神あるのは、共感を信じ、光明を未来に信ずるためだ。 かくのごとくにして、人生は、常・・・ 小川未明 「単純化は唯一の武器だ」
・・・ユーモアを愛す。ユーモアを解す。ユーモアを創る。たとえば法善寺では「めをとぜんざい」の隣に寄席の「花月」がある。僕らが子供の頃、黒い顔の初代春団治が盛んにややこしい話をして船場のいとはんたちを笑わせ困らせていた「花月」は、今は同じ黒い顔のエ・・・ 織田作之助 「大阪発見」
・・・又妾に子あらば妻に子なくとも去るに及ばずとは、元来余計な文句にして、何の為めに記したるや解す可らず。依て窃に案ずるに、本文の初に子なき女は去ると先ず宣言して、文の末に至り、妾に子あれば去るに及ばずと前後照応して、男子に蓄妾の余地を与え、暗々・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・これにてたいてい洋書を読む味も分り、字引を用い先進の人へ不審を聞けば、めいめい思々の書をも試みに読むべく、むつかしき書の講義を聞きても、ずいぶんその意味を解すべし。まずこれを独学の手始とす。かつまた会読は入社後三、四ヶ月にて始む。これにて大・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾新議」
・・・ ある人の考に、日本の文字を用うれば、人の姓名を記し事柄を書くには、もとより便利なれども、数字にいたっては、二五八三と記して二千五百八十三と解すは、これまた人民社会に不通用のことなりとの説もあれども、ひっきょう、縦の文字を縦に用うること・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・その義は諸書に記して多き中について、我が国普通の書を『女大学』と称し、女教の大要を陳べたるものなるが、書中往々不都合にして解すべからざるものなきにあらず。例えば女子の天性を男子よりも劣るものと認め、女は陰性なり、陰は暗しなど、漠然たる精神論・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・(首を振りつつ徐思えば人というものは、不思議なものじゃ。解すべからざるものをも解し、文に書かれぬものをも読み、乱れて収められぬものをも収めて、終には永遠の闇の中に路を尋ねて行くと見える。(中央の戸より出で去り、詞の末のみ跡に残る。室内寂とし・・・ 著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外 「痴人と死と」
・・・くの人は蕪村が漢語を用うるをもってその唯一の特色となし、しかもその唯一の特色が何故に尊ぶべきかを知らず、いわんや漢語以外に幾多の特色あることを知る者ほとんどこれなきに至りては、彼らが蕪村を尊ぶゆえんを解するに苦しむなり。余はここにおいて卑見・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・随分皮肉なこともいうお爺さんでございましたから、この詞を余り正直に聞いて、源氏物語の文章を謗られたのだと解すべきではございますまい。しかし源氏物語の文章は、詞の新古は別としても、とにかく読みやすい文章ではないらしゅう思われます。 そうし・・・ 森鴎外 「『新訳源氏物語』初版の序」
・・・デュウゼの芸には解すべからざる秘密がある。 バアルはこの秘密を技巧に帰した。デュウゼは方法を誤った技巧を有しているのだ。 デュウゼは一般の女優の持っている技能を持っていない。他の女優と同じ方法をもって同じ事を現わす事ができないのだ。・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫