・・・何ぜならこれは、今迄用い適用されていた感覚が、その触発対象を客観的形式からより主観的形式へと変更させて来たからに他ならない。だが、そこに横たわった変化について、理論的形式をとってより明確な妥当性を与えなければならないとなると、これは少なから・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・いわば自己を客観化して感じているのであって、対手はただ、その自己客観化を触発するにとどまるのである。――すなわち我々はある外形を見た時に、その外形の意味として我々自身の感情を感じている。そうしてそれをその対象の認識と呼んでいる。 そこで・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・岸田君が内なる美の直接に現わされたものを装飾とし、自然に触発せられて現わされたものを写実とする見方は、きわめて興味の深いものである。ことに写実の「実」について、自然の「事実」と「真実」とを区別したことは、君の作画の態度と照合して注目に価する・・・ 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫