・・・しかしアインシュタインが、科学それ自身は実用とは無関係なものだと言明しながら、手工の必修を主張して実用を尊重するのが妙だと云うのに答えて次のような事を云っている。「私が実用に無関係と云ったのは、純粋な研究の窮極目的についてである。その目・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・映画には、俳優が第二義で監督次第でどうにでもなるという言明の真実さが証明されている。端役までがみんな生きてはたらいているから妙である。 最後の場面でおつたが取り落とした錦絵の相撲取りを見て急に昔の茂兵衛のアイデンティティーを思い出すとこ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・またそういう瞬間的な現象でなく持続的な現象でもそれが複雑に入り組んだものである場合にその中から一つの言明を抽出するのはやはり一つの早わざである。観察者の頭が現象の中へはいり込んで現象と歩調を保ちつついっしょに卍巴と駆けめぐらなければ動いてい・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・現代ならかなり保守的な女学者でも云いそうなことであるが、ともかくもこれは西鶴自身の一種の自由恋愛論を姫君の口を借りて言明したものであることには疑いは無いであろう。それは当代にあってはずいぶんラジカルな意見であろうと思われる。 彼の好色物・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・重力加速度に関する物理の方則は空気の抵抗や風の横圧や、偶然の荷電や、そんなものの影響はぬきにして、重力だけが作用する場合の規準的の場合を捕えて言明しているのである。そうしてまた、加速度の数値を五けた六けたまでも詳しく云為する場合には、実測加・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・証明のできない言明を妄信するのも実はやはり一種の迷信であるとすれば、干支に関するいろいろな古来の口碑もいつかはまじめに吟味し直してみなければならないと思われるのである。 七 灸治 子供の時分によくお灸をすえると言って・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・という言明は、どうも少なくも一つの作業仮説として試みに使ってみてもいいように思われる。この仮説を許容するか、しないかで結果には非常な差を生じる。この仮説が真ならば、無駄をしないようにするには結局有益なことを一つもしないというより外はなくなる・・・ 寺田寅彦 「鉛をかじる虫」
・・・そうして、自分等がたとえ玄人の絵に対して思ったままの感じを言明しても、それは作者の名誉にも不名誉にもならないという気安さがある。これは実に有難い事である。無責任だというのではないが、何人をも傷つけること無しに感情の自由な発表が許されるからで・・・ 寺田寅彦 「二科会展覧会雑感」
・・・これは一見誇大な言明のようであるが実は必ずしも過言でないことはこの言葉の意味を深く玩味される読者にはおのずから明らかであろうと思われる。 こういう意味で自分は、俳句のほろびない限り日本はほろびないと思うものである。 付言・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・漫画が実物と似ない点において正に実物自身よりも実物に似るというパラドクシカルな言明はそのままに科学上の知識に適用する事が出来る。 ただ科学は主として物質界の現象に関係しているために、換言すれば人間の能知と切り離された所知者自身の間の交渉・・・ 寺田寅彦 「漫画と科学」
出典:青空文庫