・・・その出し前について、いつも狡い計略をするのは祖父である。アクリーナ祖母さんは、再びレース編をやり出した。そして、ゴーリキイも「銭を稼ぎはじめた。」 休日毎に朝早くゴーリキイは袋をもって家々の中庭や通りを歩き、牛骨、襤褸、古釘などを拾いあ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・元来を言えばかれは狡猾なるノルマン地方の人であるから人々がかれを詰ったような計略あるいはもっとうまい手品のできないともいえないので、かれの狡猾はかねがね人に知れ渡っているところから、自分の無罪を証明することは到底叶うまじきようにかれも思いだ・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
・・・或いは彼らの感覚的作物に対する貶称意味が感覚の外面的糊塗なるが故に感覚派の作物は無価値であると云うならば、それは要するに感覚の性質の何物なるかをさえ知らざる文盲者の計略的侮辱だと見ればよい。或いはまたその貶称意味が、「生活から感覚的にならね・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫