・・・およそこれらのごく普通な現象も、我々をしてかの強権に対する自由討究を始めしむる動機たる性質はもっているに違いない。しかり、むしろ本来においては我々はすでにすでにその自由討究を始めているべきはずなのである。にもかかわらず実際においては、幸か不・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・また問いこそその討究を真剣ならしめる推進機である。いかに問うかということ、その問い方の大いさ、深さ、強さ、細かさがやがてその解答のそれらを決定する条件である。故に倫理学の書をまだ一ページもひるがえさぬ先きに、倫理的な問いが研究者の胸裡にわだ・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・これに比べれば恋愛の社会的基礎の討究さえも第二義的というべきだ。ましてすでに結婚後の壮年期に達したるものの恋愛論は、もはや恋愛とは呼べない情事的、享楽的漁色的材料から帰納されたものが多いのであって、青年学生の恋愛観にとっては眉に唾すべきもの・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・それが現われた上での量的討究の必要と結果の意義の大切なことはもとより言うまでもないことであるが、第一義たる質的発見は一度、しかしてただ一度選ばれたる人によってのみなされる。質的に間違った仮定の上に量的には正しい考究をいくら積み上げても科学の・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・の批判で燃えていたとき、秩序をもってその問題を討究した研究会は、ほんの数えるしかなかった。この事実はラップを驚ろかした。 文学研究会の任務は、先ず職場にいる研究会員の従来のような余技的な文学興味への引こもりをやめさせて、工場内の工場新聞・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・レタリア文学運動において絶えず具体的に高められ強められてゆかなければならない芸術における階級性の問題も、今は、過去の成果と教訓によってよかれあしかれ、文学の独自的な性質をいかし個々の作品に即した方法で討究されるところに来ている。 さ・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・ 第一、プロレタリア文学の世界的陣営で、芸術創作上の弁証法的方法の問題が、どの位熱心に、誠意をもって討究されているか。作品中に具体化されているか。その見易い事実さえも筆者は無視しているではないか。残念ながらこの公開状は階級闘争における、・・・ 宮本百合子 「反動ジャーナリズムのチェーン・ストア」
・・・ 鎖国は、外からの刺戟を排除したという意味で、日本の不幸となったに相違ないが、しかしそれよりも一層大きい不幸は、国内で自由な討究の精神を圧迫し、保守的反動的な偏狭な精神を跋扈せしめたということである。慶長から元禄へかけて、すなわち十七世・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫