・・・これがこういう場合にお定まりであるようにいろいろに誤解され訛伝されている。今にも太陽系の平衡が破れでもするように、またりんごが地面から天上に向かって落下する事にでもなるように考える人もありそうである。そしてそれが近代人の伝統破壊を喜ぶ一種の・・・ 寺田寅彦 「春六題」
・・・その時グランの僧正が引導を渡したと云うのは訛伝である。それに反して、女房ユリアが夜明かしをして自分で縫った黒の喪服を着て、墓の前に立ったと云うのは事実である。公園中に一しょに住んでいただけの人は皆集まっていて、ユリアを慰めた。その詞はざっと・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
出典:青空文庫