・・・ まだ外に書きたい問題もあるが、菊池の芸術に関しては、帝国文学の正月号へ短い評論を書く筈だから、こゝではその方に譲って書かない事にした。序ながら菊池が新思潮の同人の中では最も善い父で且夫たる事をつけ加えて置く。・・・ 芥川竜之介 「兄貴のような心持」
・・・と云う題の下に、バアナアド・ショオの評論を草した。人は彼の戯曲の中に、愛蘭土劇の与えた影響を数える。しかしわたしはそれよりも先に、戯曲と云わず小説と云わず、彼の観照に方向を与えた、ショオの影響を数え上げたい。ショオの言葉に従えば、「あらゆる・・・ 芥川竜之介 「「菊池寛全集」の序」
・・・ 或弁護 或新時代の評論家は「蝟集する」と云う意味に「門前雀羅を張る」の成語を用いた。「門前雀羅を張る」の成語は支那人の作ったものである。それを日本人の用うるのに必ずしも支那人の用法を踏襲しなければならぬと云う法はない。・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・またそれを弁護し、力説する評論家がある。彼らは第四階級以外の階級者が発明した文字と、構想と、表現法とをもって、漫然と労働者の生活なるものを描く。彼らは第四階級以外の階級者が発明した論理と、思想と、検察法とをもって、文芸的作品に臨み、労働文芸・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・関心を持たれる以上は、氏の評論家としての素質は私のいう第一の種類に属する芸術家のようであることはできないのだ。氏は明らかに私のいう第二か第三かの芸術家的素質のうちのいずれかに属することをみずから証明していられるのだ。しかもその所説は、私の見・・・ 有島武郎 「広津氏に答う」
・・・ ~~~~~~~~~~~~~~~~~ 以上は現在私が抱いている詩についての見解と要求とをおおまかにいったのであるが、同じ立場から私は近時の創作評論のほとんどすべてについていろいろいってみたいことがある。・・・ 石川啄木 「弓町より」
・・・後の『小説神髄』はこれを秩序的に纏めたものだが、この評論は確かに『書生気質』などよりは重かった。世間を敬服さした。これも私は丁度同時にバージーンの修辞学を或る外国人から授かって、始終講義を聞いていた故、確かにその一部をバージーンから得たらし・・・ 内田魯庵 「明治の文学の開拓者」
・・・という動詞に敬語がつけられるのを私はうかつに今日まで知らなかったが、これもある評論家からきいたことだが、犬養健氏の文学をやめる最後の作品に、犬養氏が口の上に飯粒をつけているのを見た令嬢が「パパ、お食事がついてるわよ」という個所があるそうだが・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・私はその題を見ただけで、反動的ファッショ政治の嵐の中に毅然として立っている小説家の覚悟を書こうとしている評論だなと思った。このような原稿を伏字なしに書くには字句一つの使い方にも細かい神経を要する。武田さんが書き悩んでいるわけもうなずけるのだ・・・ 織田作之助 「四月馬鹿」
・・・京都のある雑誌でH・Kという東京の評論家を京都に呼んで、H・Kを囲む座談会をやった。司会をした仏蘭西文学研究会のT・IはH・Kの旧友だった。二人ともよく飲んだ。話がたまたま昔話に移った。「あの時は君は……」H・KはいきなりT・Iにだきついて・・・ 織田作之助 「中毒」
出典:青空文庫