・・・例えば学校の女生徒が少しく字を知り又洋書など解し得ると同時に、所謂詠歌国文に力を籠め、又は小説戯作など読んで余念なきものあり。文を学ぶには国文小説も甚だ有益なれども、年少き時には外に勉む可きもの尚お多し。詠歌には巧なれども自身独立の一義に就・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・古書堆裏独破几に凭りて古を稽え道を楽む。詠歌のごときはもとよりその専攻せしところに非ざるべきも、胸中の不平は他に漏らすの方なく、凝りて三十一字となりて現れしものなるべく、その歌が塵気を脱して世に媚びざるはこれがためなり。彼自ら詠じて曰く・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・ざる人生の天然に従った両性関係の確立、再婚の自由、娘の結婚にあたって財産贈与などによる婦人の経済的なある程度の自立性などである。詠歌には巧みなれども自身独立の一義については夢想したこともなく、数十百部の小説をよみながら一冊の生理書をよんだこ・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
出典:青空文庫