・・・既に事変下で、新体制運動が行われていたある日の新聞を見ると、政府は国民の頭髪の型を新体制型と称する何種類かの型に限定しようとしているらしく、全国の理髪店はそれらの型に該当しない頭髪の客を断ることを申し合わせたというのである。 私はことの・・・ 織田作之助 「髪」
・・・ロンブロオゾオやショオペンハウエルの天才論を読んで、ひそかにその天才に該当するような人間を捜しあるいたものであったが、なかなか見つからないのである。高等学校にはいっていたとき、そこの歴史の坊主頭をしたわかい教授が、全校の生徒の姓名とそれぞれ・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・ 以上のスペキュレーションが多少でも事実に該当するとした時に血液成分中に含まれるいかなる成分が最も有効であるかという問題が起こるが、多くの場合から類推すると、おそらく膠のようなものや脂酸のようなもので COOH 根を有するものが最も有効・・・ 寺田寅彦 「鐘に釁る」
・・・それにもかかわらず、冷静な第三者の目には明白にこの場合に該当すると思われる場合においても、弟子が先生を恨みゴシップがたきつけるという事件の起こることが意外に多いように見受けられる。これは科学的のアルバイトというものの本性に関する認識不足から・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・起訴した検事局は、どこまでも刑法に該当するものとして、ただ処罰を猶予したに過ぎなかったのである。法律上は素人である平凡なおとなしい市民は、このことからどんな印象をうけたであろうか。今日になっても、検事局は、やっぱり恐ろしいところであるという・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・自分は編輯責任者として尊厳冒涜という条項に該当するのだそうである。時刻が時刻なのですっかり腹がすき、自分が激しい食慾で弁当をたべているむかい側で清水は何も食べず、煙草をふかしている。そして自分は女房には絶対服従を要求しているが、工合がわるい・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ 贅沢品とりしまりの標準は月収三百円とかいわれているが、これに該当する生活者は日本の全人口の僅何割かに過ぎない。標準の低下を叫ばれるのは当然である。そして、一方に、悪妻的さもしい手を用いる隙を与えないように、原料その他の価が考慮されて欲・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・遺憾ながら予の顔面に該当品を発見せず」 あきらかに、いまの日本に横行している、笑わされたあとでは、気分がわるくなるくすぐりの調子である。崇仁親王という名と、その人のストリップ的なこのようなくすぐりと。この結び合わせこそ、「とんでもハップ・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・それでは一体私のどこがそれに該当するのかということをききましたとき、それはいえない、お前の胸にきいてみろという。私は何も関係していない。」「そして百余日のあいだそんなやりもしないのにそんな共同正犯なんて、そんな馬鹿なことがあるものかという気・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫