・・・ 外国はどうだか知りませんけど日本で小供に対しての読物の注意と云う事は先まであんまり重じられていませんでした。 十一二の子供は必して、カチカチ山、桃太郎 の御話に満足するもんでもなく、「フーン」と思うものだってありません。 絶え・・・ 宮本百合子 「現今の少女小説について」
・・・ 婦人部の機関紙『労働婦人と農婦』に掲載される読物の多くは、女流作家によって書かれたものだ。『若い親衛軍』『赤い処女地』などという雑誌に、或る工場内の文学研究会から推薦された労働者の小さい作品が発表されることもある。 いきなりそ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 私たちが小さかった頃の読物は巖谷小波が筆頭で、どれもみな架空の昔風なお伽話であった。さもなければ、継母、継子の悲惨な物語か曾我兄弟のような歴史からの読物である。普通の子供が毎日経験している日常生活そのものを題材としてとりあげて、その中・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
この一二年来、文学的な本を読む読者の数がぐっとふえていることは周知の事実であって、それらの新しい読者層の何割かが、通俗読物と文学作品との本質の区別を知らないままに自身の購買力に従っているという現象も、一般に注意をひいて来て・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・ 話はすこし飛んで、東京日日新聞でこの頃毎日東京ハイキングという特別読物を連載している。社会欄にさしはさまれて、今日などは島崎藤村が昔ながら住う飯倉の街を漫歩して、魚やの××君などと撮した写真をのせている。それぞれに写真にも工夫があって・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・身の上相談では、わが身の上の苦しさを訴える女のひとの立場と、それに解答を与える女のひと達の立場とが、相対的に今日おかれている日本の女の社会性の内容、水準等を、おのずから読者の前に披瀝しているのである。読物として各紙が飽きずそれを掲載している・・・ 宮本百合子 「女性の教養と新聞」
・・・ 外の国みたいに、子供のための読物、或は子供のための芝居、子供のための音楽、そういうものを大人が考えて、大人が自分のセンチメンタリズムでこね上げ、子供に当てはめて、甘いものにしたり、非常に程度の低いものにしたり、荒唐無稽のものにしたりす・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・ そして、彼女の心附かないうちに、生活の律動は、読み物の影響と、或る程度まで養われた道徳意識の影響と、今まで続いて来た生活の形式の反動との力を集めて或る次の一点へ徐々に彼女を動かしていた。 自分ばかり凝視していた彼女の眼は、そろそろ・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・文学ともいえない読物の中には、重役と女秘書、闇の事業の経営者とその婦人助手のいきさつなどがはやっているけれども、パール・バックの「この心の誇り」にとらえようとされている女性の自立の世界と、それはどんなにちがっているかということを見くらべるに・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・風雲児的な近藤、土方が戦いを一身の英雄心・栄達心と結びつけて行動したことから大局を破局に導いたところ、また甲陽鎮撫隊の構成の様々な心理的要素などに作者は軽く筆を突きすすめてはいるが、読後の印象は一種の読物の域を脱しない作品である。新講談の作・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫