・・・更けても暗くはならない、此頃の六月の夜の薄明りの、褪めたような色の光線にも、また翌日の朝焼けまで微かに光り止まない、空想的な、不思議に優しい調子の、薄色の夕日の景色にも、また暴風の来そうな、薄黒い空の下で、銀鼠色に光っている海にも、また海岸・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
・・・柔らかで細かい、静かで淡い全体の調子も、この動機を力強く生かせている。 このような淡い繊弱な画が、強烈な刺激を好む近代人の心にどうして響くか、と人は問うであろう。しかしその答えはめんどうでない。極度に敏感になった心には、微かな濃淡も強す・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫