・・・婦人に於ても、男子に於ても、そうでありますが、自分のことだけを考えて、社会について顧みないようなものは、論外であるとして、また家庭について考えず、子供について考えないようなものが、階級について考えるということは、滑稽、矛盾も甚しいではありま・・・ 小川未明 「文化線の低下」
・・・ 自分の世界観をはっきり持っていなくても、それでも生きて居れる人は、論外である。そうでなくて、自分の哲学的思想体系を、ちゃんと腹に収めてからでなければ、どんな行動も起し得ない種類の人間も、たくさんあることと思う。アンチテエゼの成立が、そ・・・ 太宰治 「多頭蛇哲学」
・・・『できない』やつは、これは論外。でも、のぞみとあらば、来月あたり、君たちに向って何か言ってあげてもかまわないが、君たちは、キタナクテね。なにせ、まったくの無学なんだから、『文学』でない部分に於いてひとつ撃つ。例えば、剣道の試合のとき、撃つと・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・便宜その他のあまり真剣でない雑多の動機から行なわるるものもないとは限らないが、そういうものは論外である。ほんとうの宣伝ならば、宣伝さるる事がらの絶対価値に対する強い信念があっての上での事に相違ない。そういう信念があった上でそれを宣伝する方法・・・ 寺田寅彦 「神田を散歩して」
・・・いわんや、餅や、飴などは論外である。 これは何事を意味するか。 入歯を、発明し、改良して来た西洋人が、もしわれわれと同じ食物を食って生きているのだったら、そうしたら、餅を食っても、飴を食っても、故障の起らないような入歯が、今頃は出来・・・ 寺田寅彦 「鑢屑」
・・・西洋の新らしい説などを生噛りにして法螺を吹くのは論外として、本当に自分が研究を積んで甲の説から乙の説に移りまた乙から丙に進んで、毫も流行を追うの陋態なく、またことさらに新奇を衒うの虚栄心なく、全く自然の順序階級を内発的に経て、しかも彼ら西洋・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・無論マクベスの発端のように行数は短かくても、興味の上において全篇を貫く重みのあるものは論外であるが、平々凡々たるしかも十行内外の一段を設けるのは、話しの続きをあらわすためやむをえず挿入したのだと見え透くように思われる。換言すれば彼の戯曲のあ・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・ 返す返す申すようですが題がすでに文芸と道徳でありますから、道徳の関係しない文芸のことは全然論外に置いて考えないと誤解を招きやすいのであります。道徳に関係の無い文芸の御話をすれば幾らでもありますが、例えば今私がここへ立ってむずかしい顔を・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
・・・但しこれは海産物と廃物によって養う分の家畜は論外であります。然しながらそれを計算に入れても又大丈夫です。家畜だってみんな喰べるものばかりでなく羊のように毛を貰うもの馬や牛のように労働をして貰うものいろいろあります。 次に食料が半分になっ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・などというに至っては、すでに論外である。 真にプロレタリアートの立場に立ち、戦闘的マルキシストの目で発展の本質を理解すれば、われわれの当面する矛盾こそ発展の最大のモメントとして現れていることを理解するのである。 たとえばブルジョア文・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
出典:青空文庫