・・・しかし私は議論というものはとうてい議論に終わりやすくって互いの論点がますます主要なところからはずれていくのを、少しばかりの議論の末に痛切に感じたから、私は単に自分の言い足らなかった所を補足するのに止めておこうと思う。そしてできるなら、諸家に・・・ 有島武郎 「想片」
・・・ もとより、一九三一――三年間の、日本におけるプロレタリア文化・芸術運動の方針が、それとしてきりはなして今日研究されたとき、指摘されるべきいくつかの論点があることは明白である。けれども、どういう社会現象も当時互に関連して動いていた諸事情・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
河上氏の私に対する反ばくは一種独特な説諭調でなかなか高びしゃである、が、論点が混乱していて、多くの点が主観的すぎる。河上氏は私が「読者の声を拒絶し、封じ」「一切の批判をさしひかえ」させようとするかのように書いているが、全く・・・ 宮本百合子 「河上氏に答える」
・・・佐多稲子の作品をかたるとき、批評は生活派らしい座りかたになり、地声となっているが、論点は作者と読者を肯かせるところまで掘り下げられていなかった。大岡昇平、火野、林などの作家にふれた前半と後半とはばらばらで、きょうの日本とその人民が歴史的にお・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・文学理論は、そのものとしてとりあげられず、すでに下ゆく水の流れの上におかれて論ぜられるのであったから、論議は理論的に進まず、論点の転換点はいつも心理的な動因に立っていた。しかも、誰一人その機微につき入る親切も、辛辣ささえももたなかった。その・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・しかし、あの論文の書きかたは技術的に理論のアクロバットであったし、第三者に対しても論点を明瞭に示して、問題を正しく会得させてゆくために必要な客観的叙述にかけていたのは残念でした。文学評論が、論争の当事者にだけわかり、その感情を刺激しあうよう・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・それは、文化面をもひきくるめてのこういう誤った全体主義の見かたが、どうして今日大衆の進歩的な部分、知識人の進歩的な部分によって、それが当然受けるべきだけ十分、論点をはっきりさせた反撃をうけずにいるかということである。その心理的な諸原因につい・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・この課題について、わたしは自分として一定の見解を主張するというよりは、むしろ、みんなの手近にある『新日本文学』『文学サークル』『勤労者文学』などを見直して、そこからひき出されて来る具体的な論点をあらまし整理し、発展させてみる方が、実際的だと・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・窪川さんは、さき程この論点にふれて「感情をこめて討論されているが」という意味の微妙な表現をしました。たしかに小林多喜二的身まがえという表現そのものが、わたしたちの間で何か感情を刺戟する問題であるようです。徳永さんは、この夏或る座談会でこの問・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・子供は実証主義者だから、母が主人という立場から、かくかくにするべきもの、という論点は分らず、女中がしたことがわるかったか、よかったかということを、めのこで主張し弁護するのであった。「お前はだまっているもんです、子供のくせに!」そう言われるよ・・・ 宮本百合子 「私の青春時代」
出典:青空文庫