・・・かえってずっと古い昔には民衆的であったかと思われる短歌が中葉から次第に宮廷人の知的遊戯の具となりあるいは僧侶の遁世哲学を諷詠するに格好な詩形を提供していたりしたのが、後に連歌という形式から一転して次第にそうした階級的の束縛を脱しいわゆる俳諧・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・ こういうふうな立場から見れば「花鳥諷詠」とか「実相観入」とか「写生」とか「真実」とかいうようないろいろなモットーも皆一つのことのいろいろな面を言い現わす言葉のように思われて来るのである。 短歌もやはり日本人の短詩である以上その中に・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・というだけのことを繰り返し繰り返し諷詠したものであって、連作としてはおそらく最も単純な形式に属するものであろうと思われる。そうして、たとえば「松の葉」の現われる位置がほとんど初五字かその次の七字の中かにきまっており、「露」はだいたい一首の中・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
出典:青空文庫