はしがき この小冊子は、明治二十七年七月相州箱根駅において開設せられしキリスト教徒第六夏期学校において述べし余の講話を、同校委員諸子の承諾を得てここに印刷に附せしものなり。 事、キリスト教と学生とにかんすること多し、しかれど・・・ 内村鑑三 「後世への最大遺物」
・・・少なくともそこにはかわいた、煩鎖な概念的理窟や、腐儒的御用的講話や、すべて生の緑野から遊離した死骸のようなものはない。しかし文芸はその約束として個々の体験と事象との具象的描写を事とせねばならぬ故、人生全体としての指導原理の探究を目ざすことは・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・ビヤホールのラジオは、そのとき、大声で時局講話をやっていました。ふと、その声に耳をすまして考えてみると、どうも、これは聞き覚えのある声でございます。あいつでは無いかな? と思っていたら、果して、その講話のおわりにアナウンサアが、その、あいつ・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・こういう巧智はしかしことごとくが亀さんの独創によるものではなくて、大部分は重兵衛さんの晩酌時の講話の時に授かったものであった。重兵衛さんの寺子屋時代の悪戯にはずいぶん過劇なものもあったようである。 こういう、学校では教わらない悪戯教育も・・・ 寺田寅彦 「重兵衛さんの一家」
・・・西川一草亭の花道に関する講話の中に、投げ入れの生花がやはり元禄に始まったという事を発見しておもしろいと思った。生花はもちろん茶道、造園、能楽、画道、書道等に関する雑書も俳諧の研究には必要であると思う。たとえば世阿弥の「花伝書」や「申楽談義」・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・おもちゃその物の効果については時々教育家や心理学者の講話を新聞や雑誌で読んでみるが、具体的に何商店のどのおもちゃがいいという事を教えてくれないのは物足りない。実際買おうと思って見渡す時に、自分が安心してこれならと思う品がまことに少ない。こん・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・人間がたった一人で世の中に存在しているということは、ほとんど想像もできないかも知れないし、またそこまで論理を頼りに推詰めて考える必要もない話ですが、そこまで行かないとちょっと講話にならないから、まあそうしておくのです。すなわち誰のお世話にも・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・しかしこの堺は当初からの約束で是非何か講話をすべきはずになっておりましたから私の方もそれは覚悟の上で参りました。したがってしっかりした御話らしい御話をしなければならない訳でありますが、どうもそう旨く行かないからはなはだ御気の毒です。ただいま・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・ただいま正木校長の御話のように文学と美術は大変関係の深いものでありますから、その一方を代表なさる諸君が文学の方面にも一種の興味をもたれて、われわれのような不調法ものの講話を御参考に供して下さるのは、この両者の接触上から見て、諸君の前に卑見を・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・ やっぱりこのスモーリヌイの婦人部の仕事で、農村の女を目標にいろんな講話会が開かれた。 これはそのとき送られた質問の一つだ。 スモーリヌイでは地階に大食堂がある。 働いているものが、みんなそこで食事をしたり茶をのんだりし・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
出典:青空文庫