・・・ その低い文化水準を高めるために、経営者たちは工場の寄宿舎につめられている労働婦人にどんなものを読ませ、どんな講話をきかせているだろうか? 商業ジャーナリズムの一隅、工場御用雑誌営業者が歴と存在して、『白百合』『処女』などという印刷・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・そうでなければ次ぎの進歩が分りかねるからであるが、昨年の夏、総持寺の管長の秋野孝道氏の禅の講話というのをふと見ていると、向上ということには進歩と退歩の二つがあって、進歩することだけでは向上にはならず、退歩を半面でしていなければ真の向上とはい・・・ 横光利一 「作家の生活」
・・・わたくしは友人の岡本の言葉に刺激されて、藤岡作太郎著『国文学史講話』の序文を読んだ。そうして非常に動かされた。しかしそのなかに「とにかく余は今度我が子のあえなき死ということによりて、多大の教訓を得た。名利を思うて煩悶絶え間なき心の上に、一杓・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫