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・・・そして神田の西洋料理でやった謝恩会へも出た。しかし黙ってすみのほうへ引っ込んでいた。」こんな事が「どうなりゆくか」と題した日記のノートの最後のページに書いてある。それでこの帳面は終わっているのである。卒業はともかくも亮にとっても一つの一大転・・・
寺田寅彦
「亮の追憶」
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・・・ わたしは何となくいつも心に苦しさのある生徒だったが、卒業してからは、謝恩的な感情に支配されるのが普通とされている卒業生の雰囲気にとって、一つのとげのような存在となってしまった。わたしは一度ならず、女学校時代の思い出の痛苦をかいたから。・・・
宮本百合子
「歳月」