・・・ 定まって晩酌を取るというのでもなく、もとより謹直倹約の主人であり、自分も夫に酒を飲まれるようなことは嫌いなのではあるが、それでも少し飲むと賑やかに機嫌好くなって、罪も無く興じる主人である。そこで、「晩には何か取りまして、ひさしぶり・・・ 幸田露伴 「鵞鳥」
・・・ かくの如くして多年の成跡を見るに、幾百の生徒中、時にあるいは不行状の者なきに非ずといえども、他の公私諸学校の生徒に比して、我が慶応義塾の生徒は徳義の薄き者に非ず、否なその品行の方正謹直にして、世事に政談にもっとも着実の名を博し、塾中、・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」
・・・ 入学試験の新考査法についてこの春様々の論調があったとき、衆口おのずから一致したのは、小学教員のおかれている経済的誘惑の点であった。 謹直な教師たちに屈辱感を与えたにちがいないその問題は、しかし、愈物的条件の切迫した来春どんな形で再・・・ 宮本百合子 「女性週評」
出典:青空文庫