・・・そのころ東成禁酒会の宣伝隊長は谷口という顔の四角い人でしたが、私は谷口さんに頼まれて時々演説会場で禁酒宣伝の紙芝居を実演したり、東成禁酒会附属少年禁酒会長という肩書をもらって、町の子供を相手に禁酒宣伝や貯金宣伝の紙芝居を見せたりしました。そ・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・西帰の後丹後におること三年、因って谷口氏を改めて与謝とす。彼は讃州に遊びしこともありけん、句集に見えたり。また厳島の句あるを見るにこの地の風情写し得て最も妙なり、空想の及ぶべきにあらず。蕪村あるいはここにも遊べるか。蕪村は読書を好み和漢の書・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・兄上の谷口辞三郎氏は、早い頃フランス文学を日本に紹介した方であるし、兄上の一人の河野桐谷氏は、日蓮の研究家、文筆の人として活動された。孝子夫人が文学について趣味の深いことは、血統のおくりものと云えるのかもしれない。 その上に、孝子夫人の・・・ 宮本百合子 「白藤」
・・・丁度その時広岸山の神主谷口某と云うものが、怪しい非人の事を知らせてくれたので、九郎右衛門が文吉を見せに遣った。非人は石見産だと云っていた。人に怪まれるのは脇差を持っていたからであった。しかし敵ではなかった。 九郎右衛門の足はまだなかなか・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
出典:青空文庫