・・・ 同志小林の不滅の精神は、今日われわれが正しい決議を発表し得るに至った全過程を生々と貫き、更に決議そのもののうちに燦然と輝やいているのである。 万一、決議が、同志小林の英雄的殉難を機とし、謂わばそれによって心を入れかえた常任中央委員・・・ 宮本百合子 「前進のために」
不図眼がさめると、いつの間にか雨が降り出している。夜なか、全速力で闇を貫き駛っている汽車に目を開いて揺られている心持は、思い切ったような陰気なようなものだ。そこへ、寝台車の屋蓋をしとしと打って雨の音がする。凝っと聴いている・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・ 若し、貴女が真個に良人を愛し、その愛の為に自己を貫き度いと云うのなら、どこまで遣れるか、遣れる処まで突き進んで見たらよいではありませんか、たといその為に行倒れになったとしても本望でしょうと云う、言葉は燃え、壮んです。 けれども、そ・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・が、その事実の歴史的、政治的把握の確かさ、文章の活々した情熱、恐ろしい困難、闘争、建設を貫き彼女が身をもって経験した数々のエピソードの感銘ふかさは読者をつよく動かした。写真を見たものは、みんなはレイスネルの優美さにおどろき、この優美な一人の・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・今こそ危いと云う感が一同の胸を貫き、じっと場席にいたたまれなくさせたのだ。 停車した追分駅では、消防夫が、抜刀で、列車の下を捜索した。暫く見廻って、「いない。いない」と云う声が列車の内外でした。それで気が緩もうとすると、前方で、・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
出典:青空文庫