・・・すなわち、数尺の鉛板あるいは百尺の水層を貫徹して後にも、なお機械に感じるのであるから、ビルディングの中の金庫の中にだいじにしまってある品物でもこの天外から飛来する弾丸の射撃を免れることはできないわけである。従ってわれわれのだいじな五体も不断・・・ 寺田寅彦 「蒸発皿」
・・・作者が主題をそこまで積極的にプロレタリアの課題とするところまで高めたなら、佐田の実践はよしんばあの形態において書かれたにしろ、その個人的な非組織性――小ブルジョア的なアナーキー性に対し、作者は目的を貫徹するための執拗な周密な行動を、集注し指・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・彼女が女であって或る人類的な努力を貫徹したことは、今日の現実の中で何と云っても男が同じことを仕とげたとは違った具体的な努力の過程をもっている。科学は人間のことであるからこそ、女の生活というものがわかるからこそ、キュリー夫人伝が、人々の心に尊・・・ 宮本百合子 「寒の梅」
・・・し引いた賃銀を支給すること、各駅にオゾン発生器をおくこと、宿直手当、便所設置その他を獲得し、婦人従業員の有給生理休暇要求は拒絶されて女子の賜暇を男子と同じによこせ、事務服の夏二枚冬一枚の支給、その他を貫徹した。白鉢巻姿の、決意に燃える婦人争・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・それは必ず貫徹し得るから。まことに生活の結晶であるから。―― 林町の生活について以前二十枚近く書いたことがありました。ではこの次の手紙はその分だけにいたしましょう。 私へのおまじないをありがとう。むしがれいはそろそろたべられるけれど・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・「現代において、現代の真の意味から文学を判断することは生やさしいことではなくても、日常批評においても、仮りに私が一定の歴史的立場からする批評とよぶものを貫徹することが必要である」 福田恆存のように一九四九年を、「知識階級の敗退」の年と概・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・文学活動家に、より明確に現実を把握させ、掘り下げる方法を獲得させプロレタリア革命の現実的根拠の見透しにたって、その組織と創造活動を高めてゆくためには、具体的に、大衆活動の中でプロレタリアートの主導性の貫徹が、されなければならない。ここに、社・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・経済、政治、文化の全面にわたって人民としての要求を貫徹し、日本の民主化を徹底させるための人民戦線、民主戦線ということが、私たちの現実的で発展性ある方法として、身近いものとなりつつある。人民は、自分の全生活について自分たちで判断・配慮し、分別・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・の中で、繰返し繰返し組織のデモクラシーを、ボルシェビキ的指導で貫徹することの絶対的必要を力説している。 最後に、これらの批判中に示されている中條の論文と指導部との関係についての関心に対して一言したい。 同志神近は、中條の「左」への危・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・愛を貫徹する自由こそ基本的人権の最も人間らしい要素の一つなのである。〔一九四六年十一月〕 宮本百合子 「貞操について」
出典:青空文庫