子供のころから、お洒落のようでありました。小学校、毎年三月の修業式のときには必ず右総代として校長から賞品をいただくのであるが、その賞品を壇上の校長から手渡してもらおうと、壇の下から両手を差し出す。厳粛な瞬間である。その際、・・・ 太宰治 「おしゃれ童子」
・・・これなら楽しみが多いことであろう。賞品は次の日曜日に渡しますとある。人間いくら年をとっても時には子供時代の喜びを復活させる希望を捨てなくてもいいのである。 M夫人が到着したのでそろそろ出掛ける。 一体の地面よりは一段高い芝生の上に小・・・ 寺田寅彦 「ゴルフ随行記」
・・・いいか、ぼくがうたうよ。賞品のうただよ。 一とうしょうは 白金メタル 二とうしょうは きんいろメタル 三とうしょうは すいぎんメタル 四とうしょうは ニッケルメタル 五とうしょうは とたんのメタル 六とうしょうは に・・・ 宮沢賢治 「かしわばやしの夜」
・・・そして、いつぞやの早まわりで賞品としてもらった小型フォードにのりこみ、ミュンヘンに潜入し、危険をおかしてひとたびはすてた家に忍びこんだ。そして原稿を盗み出し、真夜中に、もう二度とみる希望のないその家を去った。 二・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ 一汗小母さんがかいて自分の賞品のわきへどくと、音楽は一寸止み、今度は火花の散るような急調な舞踏曲がはじまった。踊り達者で名うてのオリガが、重い防寒靴をはいているとは信じられない身軽さで、つと輪の真中にでた。機械工体育部水泳選手のドミト・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
・・・小学校の卒業のときは、総代で、東京市の優秀児童ばかりを集めた日比谷の表彰式で、市長からの賞品を貰った。そのとき綺羅を飾った少女たちの間に、村上けい子という最優賞の娘は、質素な紡績絣の着物に色の褪せた海老茶の袴という姿で人々を感動させたという・・・ 宮本百合子 「なつかしい仲間」
出典:青空文庫