・・・そうして、従来見た火山の噴煙と比べて著しい特徴と思われたのは噴煙の色がただの黒灰色でなくて、その上にかなり顕著なたとえば煉瓦の色のような赤褐色を帯びていることであった。 高く上がるにつれて頂上の部分のコーリフラワー形の粒立った凹凸が減じ・・・ 寺田寅彦 「小爆発二件」
・・・総身の羽が赤褐色で、頸に柑子色の領巻があって、黒い尾を長く垂れている。 虎吉は人の悪そうな青黒い顔を挙げて、ぎょろりとした目で主人を見て、こう云った。「旦那。こいつは肉が軟ですぜ。」「食うのではない。」「へえ。飼って置くので・・・ 森鴎外 「鶏」
一 松の樹に囲まれた家の中に住んでいても松の樹の根が地中でどうなっているかはあまり考えてみた事がなかった。美しい赤褐色の幹や、わりに色の浅い清らかな緑の葉が、永いなじみである松の樹の全体であるような気持ちがしていた。雨がふると幹・・・ 和辻哲郎 「樹の根」
埴輪というのは、元来はその言葉の示している通り、埴土で作った素焼き円筒のことである。それはたぶん八百度ぐらいの火熱を加えたものらしく、赤褐色を呈している。用途は大きい前方後円墳の周囲の垣根であった。が、この素焼きの円筒の中には、上部を・・・ 和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
出典:青空文庫