・・・ 蓋し司法権の独立完全ならざる東洋諸国を除くの外は此如き暴横なる裁判、暴横なる宣告は、陸軍部内に非ざるよりは、軍法会議に非ざるよりは、決して見ること得ざる所也。 然り是実に普通法衙の苟も為さざる所也。普通民法刑法の苟も許さざる所也。・・・ 幸徳秋水 「ドレフュー大疑獄とエミール・ゾーラ」
・・・ たとえば海陸軍においても、軍艦に乗りて海上に戦い、馬に跨て兵隊を指揮するは、真に軍人の事にして、身みずから軍法に明らかにして実地の経験ある者に非ざれば、この任に堪えず。されども海陸軍、必ずしも軍人のみをもって支配すべからず。軍律の裁判・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・特務曹長「それは蓋しいかない。軍人が名誉ある勲章を食ってしまうという前例はない。」曹長「食ったらどうなるのでありますか。」特務曹長「軍法会議だ。それから銃殺にきまっている。」間、兵卒一同再び倒る。曹長(面「上官。私は決心いた・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
・・・問題となって、そこの女生徒全部を軍法会議にまわすと云って脅かした。学校当局はあわてて生徒たちに謝らせようとした。 けれども、生徒たちは、皆で軍法会議にまわされるならば、それは仕方がない。軍法会議の席で、初めに乱暴をしたのは誰であるかとい・・・ 宮本百合子 「結集」
・・・早速フランスに出発すべきであったのに、ロンドンの盛り場で妙な女と遊び歩き、帰隊を後らせた為、軍法会議に附せられました。今度も父の有力な地位と戦時中のおかげで、直ぐ戦線に加ると云う条件で許されました。が、平和が調印され、学生と云うので早く兵籍・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・内容は、武田信玄の家法、信玄一代記、家臣の言行録、山本勘助伝など雑多であるが、書名から連想せられやすい軍法のことは付録として取り扱われている程度で、大体は道徳訓である。この書がもしその標榜する通りに成立したものであるならば、『多胡辰敬家訓』・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫