・・・そうして彼女の心の態度はこのライトモチーフの現われるたびごとに急角度で転回する。そうしてその一転ごとにだんだんにそうして不可避的に最後のクライマックスに近づいて行くのである。 太鼓の描くこの主題の伴奏としてはラッパのほかに兵隊の靴音があ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・とどなるのをきっかけに、画面の情調が大きな角度でぐいと転回してわき上がるように離別の哀愁の霧が立ちこめる。ここの「やま」の扱いも垢が抜けているようである。あくどく扱われては到底助からぬようなところが、ちょうどうまくやれば最大の効果を上げうる・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・そこには論理的立場の転回がなければならない。しかし私は右の如く科学と哲学との相違を明にすべきを主張するものではあるが、一派の学者の如く単に両者を無関係的に考えるものではない。哲学は科学を尊重し、科学を材料とするとともに、科学は哲学に基礎附け・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・に到って一つの転回を示した。これは、都会の大学に苦学的な学生生活を営んでいた駿介という主人公の青年が、都会の文化と知識人の生活を批判して故郷の農村の家へ帰って素朴な勤労生活に入ることを描いた作品である。 これまでの作品でこの作家は、執拗・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 現代は、世界史が一つの画期をつくり出しつつある時代で、その中での日本も未曾有の複雑な転回を示している。時々刻々に社会全般の生活が動いて行っていて、その動きの中では種々様々の声と行動とが主張されている。しかし、一つの声なり行動なりがそれ・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・それにも拘らず、私一人としては慎重に思いあらためて見ずにおけない、内的転回が極最近に行われました。数年間持続した渾沌が或る程度まで整理され、兎に角落付ける光がさして来たのです。 一体、私は、幼女の時代から、概して幸福といわれる境遇のうち・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫