・・・ たいして、急がなければならぬことでないのに、彼等は自動車に乗り、また、出なくて家にいてもいゝのに、外へ出たり、また、それ程、物資に欠乏していないのにかゝわらず、物資をその上にも輸送し、輸入するために、トラックを走らせたり、すべてが、必・・・ 小川未明 「街を行くまゝに感ず」
・・・それでもって大阪から日本の各地や世界中へ、東京横浜の大惨害がつたえられ、地方からの食糧輸送とうがはじまったのです。同飛行機は、火災地の上空をいきかえりしたので、機体がすすでまっ黒になったと言われています。 摂政宮殿下には災害について非常・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・それは、日本航空輸送会社の旅客飛行機白鳩号というのが九州の上空で悪天候のために針路を失して山中に迷い込み、どうしたわけか、機体が空中で分解してばらばらになって林中に墜落した事件について、その事故を徹底的に調査する委員会ができて、おおぜいの学・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ 近頃またアメリカでは飛行機で大西洋を飛び越し、運送船の力を借らず航空隊を戦場に輸送しようという計画がだいぶ真面目に研究されており、それについては大西洋の気象という事が重要な問題になるのである。この事については『ローマ字世界』の十二月号・・・ 寺田寅彦 「戦争と気象学」
・・・オペラは帝国劇場を主管する山本氏の斡旋に依って邦人の前に演奏せられ、仏蘭西近世の美術品と江戸の浮世絵とは素封家松方氏の力によって極東の地に輸送せられた。日本の芸術界は此の二氏の周旋を俟って、未曾て目にしたことのなかった美術の名作を目睹し、ま・・・ 永井荷風 「帝国劇場のオペラ」
・・・彼は故郷自由の国アメリカ、黒人に対する私刑 オムスクから二時間ばかりのところに、すっかり新しい穀物輸送ステーションが出来ている。屋根からつららの下った貨車。そびえるエレバートルの下へ機関車にひかれて行く。何と新鮮なシベリア風景だ。・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・彼女は日やけした小手をかざして、眩しい耕地の果、麦輸送の「エレバートル」の高塔が白く燦いている方を眺めた。キャンプの車輪の間の日かげへ寝ころがって、休み番の若い農業労働者が二、三人、ギターを鳴らして遊んでいる。 郵便局、農場新聞発行所。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・しかし、どんな孤高の人が、輸送船の中へカタメテつみこまれなかったろうか。ジャングルの中にカタメテすてられた部隊から、一人はなれた人の飢餓と苦悩の運命の終焉が、カタマって餓死した人々の運命とその本質においてどうちがったろう? 最悪の運命の瞬間・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ヨーロッパ資本主義の国々における民主的であり進歩的である集団と、ソヴェト同盟の達成との間の、文化的輸送管のような役割を占めていた。イリヤ・エレンブルグは私たち外国作家の目に、ソヴェト作家中のハイカラーな人の一人として見えていたのであった。・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・電力アメリカ八九パーセントに対して一一パーセントである。輸送力の上にもひらきは小さくない。鉄道一五パーセント。大道路世界の二パーセント。動力による輸送二パーセント。食糧では、人口と耕地面積比率においてソヴェトが安定しているのは、自然であろう・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
出典:青空文庫