・・・あの必要以上に大規模と見える市街市街の設計でも一斑を知ることか出来るが、米国風の大農具を用いて片っ端からあの未開の土地を開いて行こうとした跡は、私の学生時分にさえ所在に窺い知ることが出来た。例えば大木の根を一気に抜き取る蒸気抜根機が、その成・・・ 有島武郎 「北海道に就いての印象」
・・・てますねと云うと、あアに家さ作って置かねいと時折仏様さ上げるのん困るからと云ってる、あとから直ぐこういう鎌が出来ましたが一つ見ておくんせいと腕自慢の話だ、そんな風だからおれは元から兼公が好きで、何でも農具はみんな兼公に頼むことにしていた。・・・ 伊藤左千夫 「姪子」
・・・けれども、これから新規に百姓生活にはいって行こうとする子には、寝る場所、物食う炉ばた、土を耕す農具の類からして求めてあてがわねばならなかった。 私の四畳半に置く机の抽斗の中には、太郎から来た手紙やはがきがしまってある。その中には、もう麦・・・ 島崎藤村 「嵐」
・・・「アフリカに於ける羅馬軍の大将アッチリウス・レグルスは、カルタゴ人に打ち勝って光栄の真中にあったのに、本国に書を送って、全体で僅か七アルペントばかりにしかならぬ自分の地処の管理を頼んでおいた小作人が、農具を奪って遁走したことを訴え、且つ、妻・・・ 太宰治 「『井伏鱒二選集』後記」
・・・が種々の改良農具「こまざらへ」「後家倒し」「打綿の唐品」などを製出した話、蓮の葉で味噌を包む新案、「行水舟」「刻昆布」「ちやんぬりの油土器」「しぼみ形の莨入、外の人のせぬ事」で三万両を儲けた話には「いかにはんじやうの所なればとて常のはたらき・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・また穀物の生長に及ぼす、光、熱、電気等の影響とか、土壌の物質的性質とかいう問題でも、一つとして物理学の応用を待たぬものはない。また農具の研究並びにその改良等も従来の型を離れて新しい発展をしようとするにはどうしても物理学、力学の応用に依る外は・・・ 寺田寅彦 「物理学の応用について」
・・・すると武田先生は急いで農舎の中へはいって農具だか何だか整理し出した。ぼくはいやで仕方なかったので内藤先生が行ってからそっと球根をむしろの中へ返して、急いで校舎へ入って実習服を着換えてうちに帰った。一千九百二十六年三月廿〔一字・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・ そこでみんなは色々の農具をもって、まず一番ちかい狼森に行きました。森へ入りますと、すぐしめったつめたい風と朽葉の匂とが、すっとみんなを襲いました。 みんなはどんどん踏みこんで行きました。 すると森の奥の方で何かパチパチ音がしま・・・ 宮沢賢治 「狼森と笊森、盗森」
・・・森が子供らや農具をかくすたびに、みんなは「探しに行くぞお」と叫び、森は「来お」と答えました。 3 烏の北斗七星戦うものの内的感情です。 4 注文の多い料理店二人の青年紳士が猟に出て路を迷い、「注文の多い料理店・・・ 宮沢賢治 「『注文の多い料理店』新刊案内」
・・・その向うの一そう烈しいかげろうの中でピカッと白くひかる農具と黒い影法師のようにあるいている馬と、ファゼーロかそれともほかのこどもか、しきりに手をふって馬をうごかしているのをわたくしは見ました。 二、つめくさのあかり・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
出典:青空文庫