・・・ ~~~~~~~~~~~~~~~~~ 以上は現在私が抱いている詩についての見解と要求とをおおまかにいったのであるが、同じ立場から私は近時の創作評論のほとんどすべてについていろいろいってみたいことがある。・・・ 石川啄木 「弓町より」
・・・ 寒月の名は西鶴の発見者及び元禄文学の復興者として夙に知られていたが、近時は画名が段々高くなって、新富町の焼けた竹葉の本店には襖から袋戸や扁額までも寒月ずくめの寒月の間というのが出来た位である。寒月の放胆無礙な画風は先人椿岳の衣鉢を承け・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・ 私が鴎外と最も親しくしたのは小倉赴任前の古い時代であった。近時は鴎外とも疎縁となって、折々の会合で同席する位に過ぎなかったが、それでも憶出せば限りない追懐がある。平生往来しない仲でも、僅か二年か三年に一遍ぐらいしか会わないでも、昔・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・この欠陥と不満は、すでに従来のお伽噺や、童話について感じられたことであって、児童の読物を科学的のものに引戻せという声は、その反動的のあらわれと見なければなりません。近時、児童の読物といえば、先ず科学的知識を主としたものが重きをなすようになっ・・・ 小川未明 「新童話論」
・・・ひとり搾取の対象となった彼等の上に、近時、社会の眼が、ようやく正しく向いて来たのでした。 小川未明 「近頃感じたこと」
一 学窓への愛と恋愛 学生はひとつの志を立てて、学びの道にいそしんでいるものである。まず青雲を望み見るこころと、学窓への愛がその衷になければならぬ。近時ジャーナリストの喧声はややもすれば学園を軽んじるかに見・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・少しく小説の数をかけて読んだお方が、ちょっと瞑目して回想なさったらば、馬琴前後および近時の写実的傾向を帯びた小説等の主人公や副主人公や、事件の首脳なんどが、いかに多く馬琴の著わした小説中の枝葉の部分に見出さるるかという点には必ず御心づきにな・・・ 幸田露伴 「馬琴の小説とその当時の実社会」
・・・今一いちいち例を挙げていることも出来ないが、大概日本人の妄信はこの時代にうんじょうし出されて近時にまで及んでいるのである。 大体の談は先ずこれまでにして置く。 我国で魔法の類の称を挙げて見よう。先ず魔法、それから妖術、幻術、げほう、・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
近時世界の耳目を聳動せる仏国ドレフューの大疑獄は軍政が社会人心を腐敗せしむる較著なる例証也。 見よ其裁判の曖昧なる其処分の乱暴なる、其間に起れる流説の奇怪にして醜悪なる、世人をして殆ど仏国の陸軍部内は唯だ悪人と痴漢とを・・・ 幸徳秋水 「ドレフュー大疑獄とエミール・ゾーラ」
・・・初生の人類より滴々血液を伝え来れる地球上譜※の一節である。近時諸種の訳書に比較して見よ。如何に其漢文に老けたる歟が分るではない乎。而して其著「理学鈎玄」は先生が哲学上の用語に就て非常の苦心を費したもので「革命前仏蘭西二世紀事」は其記事文の尤・・・ 幸徳秋水 「文士としての兆民先生」
出典:青空文庫