・・・文芸映画としてのよりどころは、後半にあったと思うが、後半での妻の演技的迫力がもう一つ足りなかったので、誠意はあるにかかわらず心理的な動きのボリュームが減った。 この頃は不自由でソヴェトの映画をなかなか見ることができなくなった。現代、あっ・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・惨苦がパセティックという感情に、導かれて、通俗人をそこの廃跡にいる間は厳粛にさせ、歴史の犠牲について、人間の発展について思わせる迫力をもって整理されている。仮に下関から東京までの戦災の、あの空虚、又只乏しさ丈の見える平面が、どんな感情をそそ・・・ 宮本百合子 「観光について」
・・・ 同時に、ケーテの芸術が真に勤労者生活を描いているからこそ生じている社会的な迫力を、ぼんやりとただ愛という宗教的なものとして解釈しようとする批評家も一部にあらわれた。穏かな言葉ではあるが、ケーテは自身でそういう評価を拒んでいる。 一・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・たと同じような日本の独特な社会の事情があったわけであるが、とにかく、数年を経て再び作家と教養の課題が立ちあらわれた時には、この教養の実質が過去への屈伏を意味したとともに、その必要を云々する作家の人生的迫力も、到って甲斐甲斐しさを喪失したもの・・・ 宮本百合子 「作家と教養の諸相」
・・・ 民主的出版物の編集が、ひとり合点で、不馴れであるし拙劣である上に、第三者に真の努力を感じさせるだけの迫力を欠いているということは、出版文化委員会の席上で、しばしば発言されたことであった。出版の仕事は客観的な現実のうちにさらされている事・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・の切り石のような迫力との対照は、メイエルホリドがひととおりの才人でないことを知らされる。「お目出度い亭主」は粉挽小舎だが、小舎のうしろの二つの風車は、粉をひくためばかりに廻っているのではない。舞台の上の劇的感情の高揚につれ、赤い大きい風・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・一巻は、私たち日本の作家に、それらの事情について思いをめぐらせずにはおかない迫力をもっている。 中国の文化はまだ甚しく不均衡で、民衆の文盲率は高く、文章によって生計を保ちがたい状態かもしれない。出版ということは、利潤追求の手段となってい・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・うような目に見える財は、バルザックの場合のように目的としても またドイツ人の場合のように手段としても、ともに彼らにとっては価値がないのである、p.176イギリス 英国流の小説の感傷的な因習が、迫力への意志を征服してしまうのである p・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・のたくましい革命的迫力によって敵ながらあっぱれなものであると現代日本のブルジョア反動文学者群の世界観を局部的にでも撃破克服した点にあるのではなく、逆にプロレタリア文学の中からでもこれくらい俺らの口にかなう作品も出るのだと、彼らに卑小な自己満・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・工場のこまかい日々の事実が、せっぱつまった資本主義経済の恐慌をひしひしと思わせるような迫力では書かれていないのだ。 それに徳永はこの小説で、これまでより一層すらすら読める書きぶりを心がけている。ひどくなめらかな調子に一日一日とうつる工場・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫