・・・ 米価惨落・生糸惨落・造船事業の縮小は来年の春までに数万人の失業者を更に街頭に送り出すであろう。 J・O・A・K! 梅村蓉子は今度結婚することになりました。 浜口首相の腹へピストルの玉がとび込んだのは日本へかえって二日目ぐらいの・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・やはり遠吠えで、半獣的な、意味の分らない叫声を、喉の奥から心から送り出す……狂人なのだ、その女の人は。有名な精神病院の監禁室の一部が丁度此方向きになっているので、見まいとしても私の眼に、その鉄棒入りの小窓が写る。 空地があるから、一町ば・・・ 宮本百合子 「吠える」
ラジオの生活性 ラジオは誰でも毎日耳で聴いているものだ、ということについて、今日ラジオを送り出す方の側の人々は、どんな感覚をもっているのだろうか。 私たちがラジオを自分たちの耳で聴いている、という・・・ 宮本百合子 「ラジオ時評」
・・・しかし、これらの憐れにも死に逝く肺臓の穴を防ぎとめ、再び生き生きと活動させて巷の中へ送り出すここの花園の院長は、もとは、彼の助けているその無数の腐りかかった肺臓のように、死を宣告された腐った肺臓を持っていた。一の傷ついた肺臓が、自身の回復し・・・ 横光利一 「花園の思想」
・・・もう二、三日すれば、お盆のために蓮の花をどんどん切って大阪と京都とへ送り出すので、その前の今がちょうど見ごろだというわけであった。それでは落合太郎君もさそおうではないかと言って、そのころ真如堂の北にいた落合君のところを十時ごろに訪ねた。そう・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
出典:青空文庫