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・・・とも子 なんですねえ途轍もない。花田 俺たち五人の中に一人、おまえの旦那にしてもいいと思うのがいるっておまえいつかのろけていたじゃないか。とも子 そりゃ……そりゃいないこともないことよ。花田 待てよ。「いないこともない・・・
有島武郎
「ドモ又の死」
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・・・ と馬鹿調子のどら声を放す。 ひょろ長い美少年が、「おうい。」 と途轍もない奇声を揚げた。 同時に、うしろ向きの赤い袖が飜って、頭目は掌を口に当てた、声を圧えたのではない、笛を含んだらしい。ヒュウ、ヒュウと響くと、たちま・・・
泉鏡花
「燈明之巻」