・・・△△は××の年齢には勿論、造船技師の手落ちから舵の狂い易いことに同情していた。が、××を劬るために一度もそんな問題を話し合ったことはなかった。のみならず何度も海戦をして来た××に対する尊敬のためにいつも敬語を用いていた。 するとある曇っ・・・ 芥川竜之介 「三つの窓」
・・・そして、田所さんの世話で造船所の倉庫番をしたり、病院の雑役夫になったりして、そのわずかの給金の中から、禁酒貯金と秋山さん名義の貯金を続けましたが、秋山さんからは何の便りも来なかった。もっともお互い今度会う時まで便りをしないでおこうという約束・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・先年の、川崎造船所のストライキに対して、歩兵第三十九聯隊が出動した。三十九聯隊の兵士たちは、神戸地方から入営している。自分の工場に於ける同志や、農村に於ける親爺や、兄弟が、食って行かなければならないために、また耕す土地を奪われないために、親・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・こんど、東京の造船所に勤めることになりました、と晴れやかに笑って言った。私はN君を逃がすまいと思った。台所に、まだ酒が残って在る筈だ。それに、ゆうべW君が、わざわざ持って来てくれた酒が、一升在る。整理してしまおうと思った。きょう、台所の不浄・・・ 太宰治 「酒ぎらい」
・・・第一高等学校を経て東京帝国工科大学造船学科へ入学し、明治三十三年卒業した。高等学校時代厳父の死に会い、当時家計豊かでなかったため亡父の故旧の配慮によって岩崎男爵家の私塾に寄食し、大学卒業当時まで引きつづき同家子弟の研学の相手をした。卒業後長・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・しかし父がいろいろの理由から工科をやることを主張したので、そのころ前途有望とされていた造船学をやることになり、自分もそのつもりになって高等学校へはいった。ネーヴァル・アンニュアルなどを取り寄せていろいろな軍艦の型を覚えたり、水雷艇や魚形水雷・・・ 寺田寅彦 「田丸先生の追憶」
・・・精巧工業では男子一六パーセント増に対して女子六一パーセント増、特に造船業・運搬用具製造業などでは男子三五パーセント増に対して女子一〇七パーセント増。二年経たないうちに若い婦人は二倍以上に増加して来ている。 鉱山に働く婦人の数が、男子一五・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・一九三〇年ころ、ソヴェト市民はドイツから機械工をよんで、精密機械製作について学ばなければならなかった。造船技術はピョートル一世がオランダ人から学んだ。ソヴェト市民の淳朴な感情には、民族的偏見というものがなくて、文明的な先進国として、資本主義・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・「三菱造船所が見えるね」と、手摺のところにいたが、「一体、あのホテル、どの見当なんだろう。ここから……」 女中をよんで地図をとりよせた。「さて、そろそろ研究にとりかかるかな」 生来地図好きなYは、新しい町に到着し、先・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・ 米価惨落・生糸惨落・造船事業の縮小は来年の春までに数万人の失業者を更に街頭に送り出すであろう。 J・O・A・K! 梅村蓉子は今度結婚することになりました。 浜口首相の腹へピストルの玉がとび込んだのは日本へかえって二日目ぐらいの・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
出典:青空文庫