・・・ 永年連添う間には、何家でも夫婦の間に晴天和風ばかりは無い。夫が妻に対して随分強い不満を抱くことも有り、妻が夫に対して口惜しい厭な思をすることもある。その最も甚しい時に、自分は悪い癖で、女だてらに、少しガサツなところの有る性分か知らぬが・・・ 幸田露伴 「鵞鳥」
・・・金の出る山ひとつ持っている、とまるで、子供みたいな、とんでもない嘘を言い出しましてな、男は、つらいものですね、ながねん連れ添うて来た婆にまで、何かと苦しく見栄張らなければいけないのですからね、わたくしたちに、それはくわしく細々とその金の山の・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・金の出る山ひとつ持っている、とまるで、子供みたいな、とんでもない嘘を言い出しましてな、男は、つらいものですね、ながねん連れ添うて来た婆にまで、何かと苦しく見栄張らなければいけないのですからね、わたくしたちに、それはくわしく細々とその金の山の・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・女は、しんから好きなおかたと連れ添うものじゃないわ。ちっとも、仕合せではありません。ああ、死なせて下さい。あたしは王子さまと生きておわかれする事は、とても出来そうもありませんから、死んでおわかれするのです。あたしがいま死ぬと、あたしも王子さ・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
出典:青空文庫