・・・その家は今でも連綿として栄え、初期の議会に埼玉から多額納税者として貴族院議員に撰出された野口氏で、喜兵衛の位牌は今でもこの野口家に祀られている。然るに喜兵衛が野口家の後見となって身分が定ってから、故郷の三ヶ谷に残した子の十一歳となったを幸手・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・その勾配を、小旗握った宿屋の番頭に引率された善男善女の大群が、連綿として登り、下りしていて、左右の土産物屋は浅草の仲見世のようである。葡萄を売っている。林檎を売っている。赤や黄色で刷った絵草紙、タオル、木の盆、乾蕎麦や数珠を売っている。門を・・・ 宮本百合子 「上林からの手紙」
・・・を持っていたということは、今日の文学の事情にまで連綿として実によく明治というものの複雑な歴史的本質を語っていると思う。 ヨーロッパの文明開化は、人間の合理性や社会性の自覚、人格、個性、自我の自覚の刺戟を伴って、ガス燈と共に我々の父たちの・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・ある主観的な点の強調からの恋愛論やその反駁、さもなければ、筆者自身が大いに自身の趣好にしたがって恋愛的雰囲気のうちに心愉しく漫歩して、あの小路、この細道をもと、煙草をくゆらすように連綿とみずから味っている恋愛論である。 私は一人の読者と・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫