「吾輩は猫である」は雑誌ホトトギスに連載した続き物である。固より纏った話の筋を読ませる普通の小説ではないから、どこで切って一冊としても興味の上に於て左したる影響のあろう筈がない。然し自分の考ではもう少し書いた上でと思って居た・・・ 夏目漱石 「『吾輩は猫である』上篇自序」
・・・『改造』に半年ほど連載して中絶した。検挙という外部からの理由でなしに中断した唯一の作品である。 いま考えれば、作者によって、あれだけ多量・広汎にソヴェト生活報告は執筆されているときであるから「ナルプ」は、啓蒙的な必要のためには、最もじか・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ 新聞に連載した小説ではあるが、「古き小画」はまるで新聞小説ではない。古代ペルシアの英雄ルスタムとその息子との悲劇の、謂わば古風なものがたりであり、文体もそういう古風な絵の趣を保とうとされている。そして、作品の人物にあらわされている風俗・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・いま毎日新聞に連載されているチャーチルの回想録をよんでもそれははっきりわかるし、最近並河亮氏が訳したアプトン・シンクレアの大長篇の一部「勝利の世界」をよんでもまざまざと描きだされている。主人公ラニー・バットは、フランスがヴィシーに政府をうつ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・今日、作家としてすこし野望的なひとは、新聞へ連載小説をかくということについて、一様に積極的な乗り気を云わず語らずのうちにもっているように見られる。そして、それが、文学の大衆性への翹望などというものから湧いている気持ではなくて、当今、人気作家・・・ 宮本百合子 「おのずから低きに」
・・・を連れてイエニーも二ヵ月滞在したパリからケルンに向った。ここでカールは新ライン新聞に入社し、「賃労働と資本」を連載した。一八四八年十一月、カールほか二人の同志が組織していた「州民主主義協会」は、内閣が自分の防衛のために議会をベルリンから他の・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・後篇を中央公論に連載しつつあった。永井荷風は往年の花柳小説を女給生活の描写にうつした「ひかげの花」をもって、谷崎潤一郎は「春琴抄」を、徳田秋声、上司小剣等の作家も久しぶりにそれぞれその人らしい作品を示した。そして当時「ひかげの花」に対して与・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・という連載小説がある。第六回の三月号の分には、一枚の大きいさし画がついていた。ハダカ電燈のつり下ったせまい台の上に立て鏡だの大きなはけの見える化粧箱がおかれていて一寸見には楽屋かと思える場所で、若い娘が手紙をかいている画である。リボンで髪を・・・ 宮本百合子 「さしえ」
・・・ 話はすこし飛んで、東京日日新聞でこの頃毎日東京ハイキングという特別読物を連載している。社会欄にさしはさまれて、今日などは島崎藤村が昔ながら住う飯倉の街を漫歩して、魚やの××君などと撮した写真をのせている。それぞれに写真にも工夫があって・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・一面から見ればこの作品はこの作家の連載物への動きであるが、「女給」というものが現代の日本の社会で経ている在りようを、享楽の対象としてではない面から描こうとされたところに、単なる通俗性への屈伏以外のものがある。「田園の憂鬱」の作者佐藤春夫の「・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫