・・・常任中央委員会から左翼的逸脱の危険を、警告されたのであった。このときは、山田清三郎が、右翼的日和見主義の自己批判を発表した。当時「ナップ」の書記長は山田清三郎であった。「前進のために」をよむと、誤りをみとめつつ、なお林房雄などの卑劣さに対す・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・世俗的な威風に満たず時に逸脱しその逸脱の本質は「元の枝へ」と「仮装人物」が「新生」と異るように異るものであった。藤村はおどろくばかり計画性にとんだ作家で、その自己に凝結する力は製作の態度から日常生活の諸相へまで滲み透っていた。藤村の生きかた・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・のように、主題の把握においてプロレタリアートの闘争から切りはなされ、プロレタリア作家に課せられている課題から逸脱したものであるならば、「移民」の書かれる革命的意味もまた少ないであろう。 作家が一つの作品から次の作品へと正しい発展をと・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・けれどもこんにち、政党、組合その他の大衆団体がそれぞれの面で文化・文学活動を行っているとき、あやまられた政治の優位性の理解は、それぞれの場面での指導の官僚化と革命の課題からの逸脱をもたらす。一九四九年において、民主主義文学者の大部分は、自分・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・に対する、又は常套的な詩的精神に対する現実の強調、勇気ある散文の精神を対置している意味は何人にも明かであるとして、現実と作家との関係を方向づけている上述のような理解は出来上った作品をよむ読者の胸に或る逸脱の危険を感ぜしめているのである。・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・ 様々な方向と傾向から通俗小説と私小説との問題は論ぜられたのであったが、現実生活と文学とにおける偶然と必然との関係の解釈は指導的な方向を持たず、遂に中河与一氏の偶然文学論へまで逸脱した。現実を「不思議」なる諸相の逆転として見ようとするこ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・エロ・グロ出版の排除という、誰も非難しようのないいとぐちによって、時事新報が誤って報道したように、万一その委員会が、刑法改正請願というような逸脱行為に導かれれば、それはとりもなおさず外見は民間の声というファシズムの手のひらで、民主的発言の口・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・荒正人氏の逸脱した見かたに対して、中野さんが新日本文学に発表した「批評の人間性」という論文は、近代文学グループのあやまりを最もむき出しに示している荒正人氏の文筆活動をとり上げて、批評しようとしたことは、適切であったと思います。しかし、あの論・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・問題をそのように整理せず、同時に各作品の右翼的傾向、逸脱への危険の具体的な程度を充分分析し得なかったところに「左」翼的危険としての破綻が現れているのである。 同志藤森、林の批判の批判は、それらの諸点をこそ明らかにすべきであった。批判によ・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ なぜなら、私自身、前にも書いたとおり、かつて作品批評に際して唯物弁証法の幼稚な機械的適用をやって、左翼的逸脱の危険を犯した経験をもっている。それにはそれで、当時のプロレタリア文学運動の情勢がきわめて有機的に私の心持に作用していたのであ・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
出典:青空文庫