・・・ 二月の海浜は、まして避寒地として有名でもない外海の浜はさびれていた。佐和子は、妹と並んで防波堤兼網乾し場の高いコンクリートのかげで、日向ぼっこをしていた。正月に、漁師たちが大焚火でもしてあたりながら食べたのだろう、蜜柑の皮が乾から・・・ 宮本百合子 「海浜一日」
・・・あなたは婦人のお友達二三人とあっちへ避寒に来ていらっしゃったのです。 女。ええ。 男。それからですね。どんな風に事柄が運んで行ったと云うことはあなたもまだ覚えていらっしゃるでしょう。ブダペストへ参ってからも、わたくしはあなたと御交際・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「最終の午後」
出典:青空文庫