・・・第一にあなたがたは自分の個性が発展できるような場所に尻を落ちつけべく、自分とぴたりと合った仕事を発見するまで邁進しなければ一生の不幸であると。しかし自分がそれだけの個性を尊重し得るように、社会から許されるならば、他人に対してもその個性を認め・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・ 軍事行動邁進の三年という年月に、ジャーナリストたちの自立も弱められた。新聞は、もう再度の文化暴圧にたいして、発言しなかった。進歩的な作家たちも、それについて理性からの批判は示しえなかった。舟橋聖一氏がこの間発表した「毒」という小説・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・さて、日本の科学者は上向線を辿っていた経済、政治、文化の波頭におされて、主観的には科学のための科学に邁進していると思いながら、客観的には当時の社会の支配勢力に役立ちつつあった。ダアウィンの学説が、十九世紀イギリス資本主義興隆の科学的裏づけと・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ 彼はそこから自分を解放することに成功しなかった個性的才能の型に圧しつぶされて自殺しながら、自分をのりこえ、階級の芸術家としての自分を生きこして邁進するソヴェト文化の勝利に向って万歳を叫んだだろう。わたしはそう感じた。 だから、「南・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
出典:青空文庫