・・・また未発表ではあるが池田芳郎君の注意されたガラス管の内部的歪による破壊の現象などもこの部類に属するもので、そこにもおもしろいわれ目の週期性が現われるのである。子供の遊戯と考えられている「リュプレヒト公子の涙」と称するものもまた同部類の現象で・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・私の見るところでニュートンやアインシュタインは明らかにこの後の部類に属する学者である。 私は、ボルツマンやドルーデの自殺の原因が何であるかを知らない。しかし彼らの死を思うたびに真摯な学者の煩悶という事を考えない事はない。 学説を学ぶ・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・こういうふうに考えてみると、書物という商品は、岐阜提灯や絹ハンケチや香水や白粉のようなものと同じ部類に属する商品であるように思われて来るのである。 毎朝起きて顔を洗ってから新聞を見る。まず第一ページにおいてわれわれの目に大きく写るものが・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・この絵などが、自分にはあまり楽しめない方の部類に属する。 展覧会によっては、殊に日本画の展覧会などでは、とても二目と見る気のしない絵が随分あるが、二科会などでは、そんなのはあまり多くは出会わないようである。これは世辞ではない。・・・ 寺田寅彦 「二科会展覧会雑感」
・・・と称せられる部類の人種の中に多いように見受けられる。これはむしろ当然の事であろう。もたないピアノに狂いようはない。咲かない花に散りようはないと同じわけである。 芥川竜之介君 芥川竜之介君が自殺した。 私が同君の顔・・・ 寺田寅彦 「備忘録」
・・・しかしそれは別問題としても、上記のごとき特殊の部類に属する現象の実験的研究からいろいろな統計的の規則正しさを発見しうるには、いかなる方法をとるべきかという事が少なくも当面の問題の一つでありはしないかと思われる。そういう実験の結果を整理するた・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・ こういう種類の現象は分類的に見るとたいてい事がらが偶然的に統計的であって、古典的物理学の意味において deterministic でないような部類に属しているのである。 統計的数字を取り扱うことが「量的」であるかないか、従来の古典・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・これもだいぶ涼しいほうの部類であろう。 義理人情の着物を脱ぎ捨て、毀誉褒貶の圏外へ飛び出せばこの世は涼しいにちがいない。この点では禅僧と収賄議員との間にもいくらか相通ずるものがあるかもしれない。 いろいろなイズムも夏は暑苦しい。少な・・・ 寺田寅彦 「涼味数題」
・・・ 同様な部類に属するのは「ほかほかと……いぼいいで」に次いで「ほろほろ……こぼるる」の来るような擬音的重畳形容詞の連続する例である。これは連続する場合もあり、四五句目に現われる場合もはなはだ多い。上の例では「ほろほろ」から四句目に「だん・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・吾々が毎日やる散歩という贅沢も要するにこの活力消耗の部類に属する積極的な命の取扱方の一部分なのであります。がこの道楽気の増長した時に幸に行って来いという命令が下ればちょうど好いが、まあたいていはそう旨くは行かない。云いつかった時は多く歩きた・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
出典:青空文庫