・・・が、廓大鏡に覗いて見ると、緑いろをしているのは緑青を生じた金いろだった。わたしはこの一枚の写楽に美しさを感じたのは事実である。けれどもわたしの感じたのは写楽の捉えた美しさと異っていたのも事実である。こう言う変化は文章の上にもやはり起るものと・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・ 以上のような花に比べると例えばホタルブクロのような大きな花は却って二十倍くらいに廓大して見てもそれ程びっくりするような意外な発見はないようであった。しかしもっと色々見ていたらまた珍しい見物に出っくわさないとも限らないであろう。 あ・・・ 寺田寅彦 「高原」
・・・例えば鼻の大きい人の鼻を普通の計測的の大きさの比以上に廓大して描いたり、喜怒の感情の発現を誇張した身振りで示すがごときは、最も月並な慣用手段である。もう少し進んだのになると、鼻や小鼻の曲線のあるデリケートな抑揚をつかまえて、これを少しアクセ・・・ 寺田寅彦 「漫画と科学」
出典:青空文庫