・・・ 失業の不安で波だつ空気の中に響いている声は、都民税二・七倍増し。外米の輸入。滞貨放出。ガスの制限もゆるやかになりました。そして冬は石炭も手に入るであろう。 ここに、わたしたちを堪えがたくする現実の矛盾がある。理性のある社会の生活で・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・片山哲が首相であった時、一般都民が高い都民税に苦しんだ頃、同氏の税額が公表されたことがあった。それは東京都民として最低の額であった。MRAのお客となることは、懐のいたまない、気分のいいことかもしれないが、そのかわり、それだけの恥もひそめられ・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・そして、そこに「全都民の指紋を登録」と三段ヌキ、トップに報道されている記事を見出した。福島のその村での結婚式の指紋とりは、偶然のことでなかった。 われわれ都民は、とられるものには、もう誰しもたんのうしきっている。とれるよりももっとどっさ・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・である。ところが、実際にはどこへ金が吸いこまれてしまっているのだろう。正業にしたがっているものは、税、税の苦しみで、片山首相が「間借り」で都民税一二〇円ですましていられたことを羨んだ。 こういう状態であってみれば、今日のメーデーに叫ばれ・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・その同じ人々が、三十五倍の都民税をはらう義務は遂行し、所得を実質的には1/3にしてしまう所得税をはらい、言論抑圧に等しい紙不足に服し、あれこれの投票をして社会生活をしていることについて我から怪しまないのはふしぎである。現に自分が屈伏しつつあ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・カタログに記録をつけなかったので、はっきり画題までは言えませんが、「都民」という絵には光線がバラバラで画面のまとまりが悪かったけれど、生活的なおもしろさがありましたし、バリカンで頭を刈っている絵とか、傷病兵をかいた絵など、技術的には幼稚にち・・・ 宮本百合子 「第一回日本アンデパンダン展批評」
・・・ この事実は、昨今新聞に発表されて、わたしたちをびっくりさせている都民税一つを例にとってもわかります。都民税というものは二三年前は一円から五六円どまりのものでした。ところが、今度発表された率によると、平均一戸五百円以上ぐらいに計算されて・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
出典:青空文庫