・・・ 次に氏は社会主義的思想が第四階級から生まれたもののみでないことを言っているが、今までに出た社会主義思想家と第四階級との関係は僕が前述したとおりだから、重複を厭うことにする。ただ一言いっておきたいのは僕たちは第四階級というと素朴的に一つ・・・ 有島武郎 「片信」
・・・毎秒にたとえば十六コマずつを撮影するとして、そのひとコマがまたシャッターの回転速度とそのセクトルの大きさによって規定されたある一定の長さの照射時間中に起こっただけのすべての事がらの重複した像を現わしていることである。これがために、いわゆるス・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・こういう重複はもちろん歓迎されないものである。 こういう例はあげれば際限はない。そうしてこういう例として適当なものは、連句として必ずしも上乗なものではなく、むしろあまりよくないほうが多いかもしれない。それはむしろ当然である。連想で呼び出・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・器械的な自然界の現象のうち、尤も単調な重複を厭わざるものには、すぐこの型を応用して実生活の便宜を計る事が出来るかも知れない。科学者の研究が未来に反射するというのはこのためである。しかし人間精神上の生活において、吾人がもし一イズムに支配されん・・・ 夏目漱石 「イズムの功過」
・・・そのせいか今まではなるほど小説家だけあってうまくこしらえるなとばかり感心していたのが、それ以後実際世の中にはずいぶん似たことがたくさんあるものだという気になって、むしろ偶然の重複に咏嘆するような心持ちがいくぶんかあるので、つい二人の作をここ・・・ 夏目漱石 「手紙」
・・・したがってややともすると主観的の句が重複して、ある時は読者に不愉快な感じを与えはせぬかと思うところもあるが右の次第だから仕方がない。 夏目漱石 「倫敦塔」
・・・併し意味は既に云い尽してあるし、もとより意味の違ったことを書く訳には行かぬから仕方なしに重複した余計のことを云う。 これは語の上にもあることで、日本語の「やたらむしょう」などはその一例である、或は「強く厳しく彼を責めた」とか、或は、「優・・・ 二葉亭四迷 「余が翻訳の標準」
・・・という形容語を添えて、ことさらに重複せしめたるは、霜の白さを強く現さんとの工夫なり。その成功はともかくも、その著眼の高きことは争うべからず。 曙覧は擬古の歌も詠み、新様の歌も詠み、慷慨激烈の歌も詠み、和暢平遠の歌も詠み、家屋の内をも歌に・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・ ゴーリキイについていくとおりもの文章が集められているが、これは重複していない。マクシム・ゴーリキイという一人の真に人民中の人民が、その野蛮と穢辱にみちた境遇からロシア人民の歴史の発展とともに、どんなに成長しぬいて行ったという足跡は、わ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『作家と作品』)」
・・・ ただ、その表現がなかなか整理されず――つまりは、皆の人によくのみこませようとするのでしょうが、重複したりして煩わしいものがあります。 一番関心を持たせられるのは、お役所などから廻ってくる印刷物に相当ムダがあって例えば“祝い終った、・・・ 宮本百合子 「回覧板への注文」
出典:青空文庫